「中野さん。お待たせ」 待ち合わせた正門の前で、彼女に声をかけた。 振り向いた彼女の瞳は、 何かを決心したようにまっすぐで、 その強さに一瞬、息を呑んだ。 ——あぁ、そうか。 春だ。 桜の花びらが、 風に乗って彼女の髪にふわりと舞い落ちる。 昼の光が柔らかく滲んで、 その瞬間だけ、 世界がスローモーションになったように見えた。 ——綺麗だ、と、心から思った。 ーーfinーー