2人分の恋

「城崎、ちょっと職員室まで来なさい」

昼休み、突然呼び出された。

何かした覚えはない。

でも、先生の顔は明らかに怒っていた。

職員室のドアが閉まった瞬間、先生の声が響いた。

「あなた、昨日学校を勝手に抜け出したって本当?」

「え……あ、昨日のこと」

「しかも、授業中に。何を考えてるの?中学3年生でしょう?」

言葉が、次々に飛んできた。

でも、頭には何も入ってこなかった。

——律の顔。 ——ひよりの言葉。 ——美羽のあの笑い声。

そればかりが、ぐるぐると回っていた。

「先生の話、聞いてるの?」

「……はい」



美羽が、私が学校を抜け出したことを“盛って”先生に話したらしい。

「授業中に勝手に出て行った」

「先生に何も言わずに帰った」 そんなふうに。

本当は、授業が始まる前だった。

でも、先生は美羽の言葉を信じていた。

美羽は、考えがずる賢くて、先生の前では、優等生アピールをしていて、先生に気に入られている。

「反省文、今日中に出しなさい。いいですね?」

「……はい」

職員室を出たあと、私は廊下で立ち止まった。

このままじゃ、だめだ。 でも、どうしたらいいのかも、わからなかった。

職員室でこっぴどく怒られたあと、私は教室に戻った。

——なんで、こんなことになったんだろう。 ——私が律と関わらなければ、ひよりにも迷惑かけなかったのに。

その思いが、頭の中をぐるぐる回っていた。

昼休み、律が私の席に近づいてきた。

「花音、先生に呼ばれてたけど…大丈夫だった?」

私は、顔を伏せたまま、答えなかった。

「昨日、何かあったの?ひよりの家に行ったって聞いたけど…」

その声は、いつも通り優しかった。

でも、今の私には、それが痛かった。

「花音、ちょっと話そうよ。ちゃんと——」

律の優しい声で、私の胸が締め付けられた。涙がこみあげてくる

「……話しかけないで!!」

声が、教室中に響いた。

律の言葉を遮るように、私は叫んでしまった。

律は、驚いた顔で立ち尽くしていた。

周りの空気が、一瞬止まった。

周りも驚いているし、美羽はにやにやとこっちを見ていた。

私は、何も言わずに席を立ち、廊下に出た。

——ごめん。 ——でも、これ以上、誰かを傷つけたくない。

その日、律はそれ以上、話しかけてこなかった。