朝、教室に入った瞬間、違和感が走った。

机の上に、落書きされたメモ。

「幼馴染ってだけで調子乗るな」 「朝比奈くんの隣、似合わないよw」

律が注意してから、表立って何かされることはなくなった。

でも、見えないところで、じわじわと嫌がらせは続いていた。

それに、私は気づいていなかった。 ——ひよりが、全部片付けてくれていたから。

毎朝早く来ていたひより。 私は、ただ「ひよりって朝型なんだな」って思っていた。

でも、今日——ひよりは風邪で休んだ。

そして、私は初めて“それ”を見た。

机の中に、ぐしゃぐしゃにされたプリント。

イスの背もたれに貼られた、悪意のあるメモ。

「……なに、これ」

その瞬間、藤堂美羽が通りかかって、ニヤッと笑った。

「やっと気づいたんだ?遅すぎwあのおばさんがいないと何もできなそうだもんね~」

「いままで、あのおばさん(ひより)がなんとかしてくれてたのにねー」

頭が真っ白になった。

怒りとか悲しみとか、そんな感情よりも先に、 私は、ただ——ひよりに会いたかった。

授業なんてどうでもよかった。

私は、教室を飛び出して、ひよりの家に向かった。

インターホンを押すと、少ししてドアが開いた。

「花音…?どしたの?」

部屋着姿のひよりが、驚いた顔で立っていた。

「……いままで、ごめん」

私の声は、震えていた。

涙がこぼれそうだった。

ひよりは、少しだけ目を伏せて、頭を抱えた。

「……ああ、ついに気づいちゃったか、ごめんね私が学校休んだから」

「なんで、花音が謝るの?あいつらがやったことなのに…」

その言葉に、涙がぽたぽたと落ちた。

「ひよりこそなんで謝るのよ、、、」

ひよりは、黙って私を抱きしめてくれた。

「大丈夫。私がいるから」