夕焼けが街を染めていた。

学校を出て、律と並んで歩く帰り道。

制服の袖が少しだけ風に揺れて、季節が夏から秋へと移っているのを感じる。

「なんと、ひよりが蒼太くんと話せたんだって!」

私は、嬉しさが抑えきれなくて、声が弾んだ。

律は少し驚いたように眉を上げる。

「へえ。あれ、ひよりって、蒼太のこと好きだったんだ」

——あ。しまった。

自分のことみたいに嬉しくて、つい話してしまった。

ひより、こういうの気にするタイプだし、言ったら怒られるかも。

「……あ、これ、たぶん言ったらひよりに怒られるから、言っちゃだめだよ」

律は私の顔をちらっと見て、ふっと笑った。

「了解。花音との約束は、なんでも守るから安心してね」


「ほんと~?」

私は、ちょっとからかうように言ってみる。

「ほんどだわ!」

律が真顔で返してきて、思わず吹き出した。

ふたりで笑いながら歩く。

その空気が心地よくて、なんでも話せる気がした。

「花音の笑顔、やっぱりかわいい」

急に律が言った。

私は一瞬立ち止まりそうになるくらい、びっくりして照れてしまった。

顔が熱くなるのがわかる。

そんな私を見てさらに一言。

「花音、照れてる?かわいい」

「もう、もてあそばないでよー」

そう言いながら、律の腕を軽くつついた。

律は笑って、私の頭をぽんと優しく撫でる。


「もてあそんでないよ。俺は、花音が好きだから、言いたくなるだけ」

その言葉に、胸がぎゅっとなった。

「……律って、ほんとにそういうとこ、変わらないよね」

「変わらないよ。むしろ、どんどん好きになってる」

律は、私の手をそっと握った。

ふたりで笑い合う。 その笑顔が、律の胸をぎゅっと締めつける。

「花音の笑顔、やっぱりかわいい」

「……え、急に何それ」

律は、彼女の手をそっと引いて、自分の方へ向かせる。

「照れてる花音も、かわいい」

「も、もう……やめてよ……」

花音が顔を隠すように手を上げる。

律はその手をそっと取って、指先にキスを落とした。

花音が固まる。

顔が真っ赤になってる

「もう、律のせいで壊れる……てか、もう壊れてる……」

律は笑って、

「じゃあ、俺が全部支える。壊れても、花音は俺のだから」

「……律、ほんとに……」

花音は、律の胸に顔をうずめた。

律は、静かに笑った。