最強で、最孤



その頃、夜の帰り道。

道場からの帰り、瑠那は道着のまま、ひとり公園のベンチに腰を下ろしていた。

汗が冷えて寒い。早く家に帰りたい。なのに、なぜか動けなかった。

スマホの通知が、心を刺すように鳴る。

嫌な予感がした。

《最近の稽古はどうですか?》
差出人は——白石。

瑠那は数秒、画面を見つめたまま固まった。

返すべきか、無視するべきか。

そもそも、白石はどういう気持でこのメッセージを送ったのか。

指が、ゆっくりと動く。

《まあまあ》

短く、それだけ打って送信した。

それだけのはずなのに、胸が少しだけ傷んだ。

風が吹く。舞う桜の花びらも、もう残っていない。

「...離れたいのに、離れられない。もどかしいなぁ」

瑠那はぼんやりと呟いた。

その声は、誰にも届かない夜に、すっと吸い込まれていった。