クール女子との同居生活。

 あのあと、俺達は田村さんの運転した車で学校付近まで向かった。

 …ギリギリまで頭をなでていて、焦りながら準備をしていたのは、誰にも言えない二人だけの秘密となった。

「ここまでありがとうございました、田村さん。」

「いえいえ、行ってらっしゃいませ。海斗様、美亜お嬢様。」

「ありがとうございました。いってきます。」

 俺と美亜は、二人で学校に向かった。

 そして、俺たちの学校が近くなり、生徒も増えてきた辺りで、こっそり分かれる。

「ここから先は、一条海斗と花崎美亜だよ。美亜」

「それでは、いってきますね。海斗君」

「いってらっしゃい」

 なんだか、夫婦みたいだな。

 俺と美亜は、こんな生活を一年間続けていくのか。

 俺は、改めて美亜と婚約者であることの喜びをかみしめた。


「おはよー!!」

 クラスに入って一番に話かけに来たこいつは、俺の腐れ縁の幼馴染である、田村結人。

 …一応、俺の将来の付き人兼補佐。

 ご想像の通り、田村さんの息子で、俺と共に行動することが多い。

「おはよう、結人」

 机に荷物を置き、準備をする。

 …作り笑顔も、忘れずに。

「「おはようございます!!海斗様!!」」

 このうるさい連中に、備えるために。

「おはよう、みんな」

「「キャー、今日もかっこいいですー!!ー!!」」

 …毎日のように、飽きないのか。こいつらは。

 声量をもう少し抑えられないのか…、耳が死にそうだよ。

「海斗様、良かったらお昼を…」

「いやいや、この私と」

「私のほうが可愛いし!、私とどうでしょう、海斗様!」

 正直、顔と財力しか興味のないやつに時間を割くほど、俺の時間は安くない。

 あと、正直あまり女子に興味はないし…

 全員の誘いに断りを入れたいが、どう言うか…
 
 俺には全員同じ顔にしか見えないなんて、正直に本人たちに言うのは面倒だ。

 別に、外見も魅力の一つだし、それで好かれる分には構わないが、女子たちの自慢するための道具になる気はさらさらない。

 しかも、俺には許嫁である美亜がいるし、不誠実なことをしたくない。

 どうしようかと頭を悩ませているとき、スマホからメッセージが来たことに気づいた。

 開いてみると、底には見慣れない猫のアイコンが映し出され、名前の欄には「美亜」と書かれていた。

 そして、メッセージが一つだけポツンと送られてきていた。

「お昼一緒に食べませんか?裏庭に集合しましょう。」

 俺が美亜に視線を移すと、一瞬だけ目が合ったが、すぐにそらされてしまった。

 さっきまでしつこく誘ってきた女子達よりも、何倍もうれしく、顔が緩むのを必死に抑えながら、女子達に断りを入れた。

 結人は、俺のことを気味悪そうに見ていた。

 …そんなに変な表情をしていたか?