クール女子との同居生活。

 次の日の朝、ゆっくりと体を起こす。

 俺の隣で、すやすやと寝息を立て、瞼を閉じている美亜が、可愛くて、無性に頭を撫でたくなるが、その手を止めて身支度を進める。

 また、困らせてしまうところだった。俺と美亜は許嫁だが、ほとんど初対面なんだ。

 初対面の相手に頭を撫でられるなんて、怖くてたまらないだろう。

 美亜が起きる前に、朝ご飯と弁当の用意をする。

 美亜は昨日みたいに、美味しそうに笑顔で食べてくれるだろうか。
 
 誰かを思う料理が、こんなに楽しいなんてな。

「美味しそうないい匂い…それに、綺麗な歌ですね。」

 俺が無意識に、鼻歌を歌っていたのが聞かれていたようだ。

「聞かれていたのか…、まあ、将来の役には立たないんだがな。」

 俺は将来一条財閥代表となる。歌もそうだが、俺の趣味は役に立たないものが多い。

「なんだか、カッコい悪いところを見せてしまったな。悪いが、忘れてくれ。」

 俺はそう言って、料理を作り終えてから、自分の部屋への道を歩いてゆく。

 その次の瞬間、美亜が俺の寝間着を指で少しつまんだ。

 それは、まるで「行かないで」と言っているような…

「なに、して」

「そんなこと、無いです。私は、好きです、からッ」

 俺が言い終える前に、美亜が遮るように言ってきた。

 お互い顔は見れないが、一つだけ分かることがあった。
 
 それは・・・

((俺/私、今絶対顔が赤い!!))

 しかも、絶対だらしない顔をしている。

「…ご、ご飯食べましょうか!」

「そ、そうだな!」

 俺にとって役に立たないこと(大好きなこと)が「好き」とは、変わったやつだよな…

 昔、同じことを言ってくれた子が居たような…気のせいか?

 まぁ、何故か少しだけ残念なような…、何故か不意に、こう思ってしまった。

「俺のことも好きになったらいいのに」

「何か言いましたか?」

 俺の言葉が聞かれてないことに、俺は安堵した。

 そして、何故か自然と美亜の頭をなでていた。

「何でもないよ、ありがとな。」

 なんとなく、美亜の頭をなでると、落ち着く。

 どこか、懐かしいような、どこか、切ないような…そんな気がする。

 美亜は少し恥ずかしそうに、でもどこか懐かしそうに、気持ちよさそうに撫でられていた。