ジローさんは、どう思ったんだろう。
タイガの“生き方”を、どう受け止めたんだろう。
そう思った時だった。
「……憎いか、俺が」
突然、静かで寂しげな声がした。
私はジローさんを、見つめていた。
ただそうしていただけなのに、銀色を纏う彼の憂いを帯びた目が、私を捉える。
まさか、ジローさんがこっちを見るなんて。
心臓が止まりそうだった。
あまりにも艶やかで、綺麗で……それでいて、冷たい。
「教えてくれ」
その眼差しは、“忘れろ”と言ったあの時の冷酷なものじゃない。
でもまだ、彼の中には闇が残っていた。
凍えるような孤独から抜け出せずにいる、その影が、見える気がした。
見つめ合っているのに、通わない温もりがもどかしくて胸がぎゅっとなる。
どうしたら、ジローさんに明るい世界を見せてあげられるんだろう。
どうしたら、光を与えてあげられるんだろう。
「俺は……お前の目に映る世界に生きていて、いいのか」
どうして、この人はそんな悲しいことを言うんだろう。
切なくて、苦しくて、視界が滲む。
「なに言ってるんですか」
その瞬間、私はジローさんに初めての感情を抱いた。
底の無い悲しみに胸の奥で何かが爆ぜ、“怒り”という激情へと、移りゆく。
「っ、当たり前じゃないですか!!生きてください!生き続けてください!!」
やっと触れられたと思ったのに。
やっと、ジローさんが自分を閉じ込めていた壁を壊してくれたと思ったのに。
その向こうで、あなたは今も苦しんだままだった。
「なに、言ってるんですか……!!」
込み上げるものが堰を切り、目の奥が熱くなっていく。
堪えきれなくなり、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
今日だけで私、何回泣いてるんだろう。
どうしてこんなに弱くなっちゃったんだろう。
みんな、真剣だからだ。
必死に生きてるからだ。
戦って、もがいて、それでも諦めずに未来を信じているから。
彼らの厳しさ、真っ直ぐな言葉、揺るがない眼差し。
その全てが、私の心を叩いた。
“人間”って、こんなにも強くて、眩しいんだって。
その大きな想いを受け止めきれない私は、涙を流すことしかできなかった。
いや、肝心なのを忘れてた。鼻水もだ。
ズルズル垂れてくるのを、タイガの制服の袖で拭った。
タイガに「コラ、またか!オメーの鼻汁でかぴかぴになんだろーが」と怒られたけど、クリーニング出すしいいじゃんって思った。
それと、鼻汁っていう言い方やめてほしい。


