ああ……ね。
ジローさんだもんね。
ジローさんらしいよね。
でもさ、
何もこの場で、そんな堂々とジロー節を炸裂させなくたっていいんじゃ……!!
「てめえは一回死んどけ!!」
ジローさんはタイガに、思いきり特大のげんこつをくらっていた。
すんごい音が倉庫の中に反響する。
ハイジの「不憫だよな、お前」って一言も、右から左へと抜けていった。
ジローさんはどんな時だって、ジローさんなのだ。
おにーさん達がズッコけるタイミングも素晴らしく揃っていて、新喜劇のようだった。
さすが“黒鷹”。団結力は申し分ない。
「……なあ」
「あんだよ!!まだ足りねえのか!?マジで真性のマゾなのかオメーは!!」
めちゃくちゃ痛そうな一発をくらっても、それをものともせずまた声をかけてきたジローさんに、タイガは牙を剥いて息巻いていた。
「お前の、“生きる”って何?“生きる”ってのは、どんなのだ」
ごく普通に、ジローさんはタイガに尋ねた。
まるで『ミミガーってどんな食べ物?』くらいのノリで。
けれどそれは、彼にとって本当に純粋な疑問なんじゃないかと思う。
うまく生きられず、不器用で、重たい足を引きずりながらここまで歩んできた人だから。
一番知りたいことなんじゃないだろうか。
『生きる』と迷いなく言い切ったタイガだからこそ──その口から聞きたかったんだろう。
「オメーは、ややこしく考え過ぎなんだよ」
そんな、“生き方”なんて難しいテーマを投げられても。
タイガは、タイガだった。
『なんだそんなことか』と今にもその瞳が語り出しそうで、少しも悩む素振りなんて見せなかった。
「メシ食って、クソして寝ろ。それだけでいい。……まあ、一つ贅沢言うなら──」
タイガの“生き方”は、
「たまに女が抱けりゃ、最高じゃねーか」
実に簡単で、実にタイガらしかった。
拍子抜けするくらい単純なのに、体の奥の奥まで染み渡って、私の心を震わす。
なんか……
何だろう。そっかって、思えた。
生きるって、そういうことなんだ。
それでいいんだ。
私だったら、こんなふうには答えられない。
“生きる”ということを、迷うことなく自分の言葉で、相手に説くなんてできない。
でも、タイガにはそれができる。
きっと、そう言えるだけの時間と経験を、彼が重ねてきたからなんだろう。
何度も荒波に呑まれ、それでも乗り越えてきたからなんだ。


