「過去は過去だ。忘れる気もねえし、目を背ける気もねえ。かといって縛られるつもりもねーよ。全部ひっくるめて、俺だからな」
生きていくうえで、過去は切っても切り離せないもの。
どんなに辛くても、どんなに悲しくても。
ジローさんだけじゃない。
タイガもまた、“傷”を背負っている。
ジローさんが言っていた、“色”。
タイガの色は、金色。
もしかしたら、その色とタイガの“過去”には、何か繋がりがあるのかもしれない。
「生きるよ、俺は」
ゆっくりと振り向き、タイガがジローさんに向けた言葉は、
どこか儚いのに──確かな強さがあった。
「お前は、いつマジになる?」
“生きる”
当たり前のはずのことが、白鷹次郎には当たり前じゃなかった。
その重みを知っているタイガだからこそ、彼の言葉はきっと、ジローさんの魂に響いた。
「お前はいつ、本気を見せるんだよ」
口を閉ざしたまま、真っ直ぐにタイガを見つめ返すジローさん。
タイガの口調には、どこか試すような含みがあった。
それでもジローさんは何も答えない。
やがてタイガの瞳から熱が引いていき、彼は視線を逸らしながら、吐き捨てるように言った。
「この先、そんなつもりもなく、まだ死にたいだの何だのとほざくんなら……勝手に死ね。野良犬のエサにでもなっちまえ。ボケナスでもそんくらいは、役に立つだろうよ」
何でかな。
理由はわからない。
胸の奥がじんわり温かくなって、すごく安心してる自分がいた。
泣きそうになって、鼻の奥がつんとする。
“大丈夫”だって、思えたんだ。
ジローさんは、大丈夫だって。
この人がいてくれるから。
こんなにも優しくて、深い愛をくれる人が傍にいるのなら──
きっと、大丈夫。
ジローさんには、タイガがついていてくれる。
「なあ」
「あ?」
そして、ジローさんがやっと……自分の意思を示そうとした。
真剣な眼差しで向き合おうとする彼に、タイガも少し身構えている。
どんな言葉が返ってくるのか。
緊張してるのは、私も、隣のハイジも、周りのおにーさん達も同じだった。
ドキドキする。
誰もが息を潜め、彼の口元に注目していた。
そして──その時は訪れる。
「ももって、誰だ」


