「同じ傷を、痛みを抱えてんだろ!?なら逃げんじゃねーよ!!一緒に乗り越えていけばいいじゃねえか、ももと!!なあ、ジロー……!!」
彼の胸倉を掴むタイガの手に、さらに力が込められる。
その声も眼差しも熱く尖り、ジローさんを強く惹きつける。
タイガの“叫び”が、私の胸を打つ。
燃え上がる炎に、心を焦がされる。
「また繰り返すのかよ。見つけたんじゃなかったのか、やっと……!!お前が、本気で守りてえ女なんだろ?大事な女なんだろ!?」
ジローさんも目を逸らしはしない。
“鷹”の双眸が、タイガを捕らえて離さない。
「なんでそんな女を、わざわざ手放すようなマネすんだよ!!目の前にいんのに、手の届く位置にいんのに、なんでお前は……!!」
人目なんか気にせず、全てをぶつけるようにタイガは言葉を叩きつける。
その姿に、私は瞬きもできなかった。
ひとつも見逃しちゃいけない。
そう思わされるくらいに、彼の表情は胸に迫った。
「俺なら、俺だったら……そうはしねえ。本気になった女なら、何があっても離したりしねえ……絶対に」
その瞳が、ふと寂しげに揺らいだ。
“何か”を思い出したように。
“何か”を、思い描いたように。
私が見逃さなかったくらいだから、きっとジローさんも感じ取っていた。
「トラ、お前……引きずってんのか、まだ」
沈黙を破り、ジローさんが静かに口を開いた。
どこか優しく、少しだけ痛みを滲ませた声色だった。
ジローさんの言葉に、タイガはまるで自分の中の何かに気づいたように、僅かに目を見開いた。
「お前が“色”を変えねえのも、そのせいだろ。過去にこだわってんのは……お前もじゃねえのかよ」
死んだように濁っていた目が、いま再び光を帯びる。
ジローさんの表情に、生気が戻っていく。
タイガを見据えるその眼差しは、猛る獣のように力強く、それでいてどこまでも美しかった。
誰もあの瞳からは、逃れられない。
──ジローさんが、目を醒ました。
何もかもを曝け出し、揺さぶり挑み続けたタイガが、彼を呼び戻したんだ。
鷹の目に射竦められたタイガは、何も言わず黙り込む。
二人はしばらく、言葉ではなく視線を交わすだけだった。
やがて先に動いたのは、タイガだった。
小さく舌打ちして、ジローさんを突き放すように手を離し、背を向けた。
「だったら、何だよ。俺はてめえとは違う」
タイガの声は、思ったよりも落ち着いていて。
どこか穏やかだった。


