気まぐれヒーロー2




「同じ傷を、痛みを抱えてんだろ!?なら逃げんじゃねーよ!!一緒に乗り越えていけばいいじゃねえか、ももと!!なあ、ジロー……!!」



彼の胸倉を掴むタイガの手に、さらに力が込められる。

その声も眼差しも熱く尖り、ジローさんを強く惹きつける。


タイガの“叫び”が、私の胸を打つ。

燃え上がる炎に、心を焦がされる。



「また繰り返すのかよ。見つけたんじゃなかったのか、やっと……!!お前が、本気で守りてえ女なんだろ?大事な女なんだろ!?」



ジローさんも目を逸らしはしない。

“鷹”の双眸が、タイガを捕らえて離さない。



「なんでそんな女を、わざわざ手放すようなマネすんだよ!!目の前にいんのに、手の届く位置にいんのに、なんでお前は……!!」



人目なんか気にせず、全てをぶつけるようにタイガは言葉を叩きつける。

その姿に、私は瞬きもできなかった。

ひとつも見逃しちゃいけない。
そう思わされるくらいに、彼の表情は胸に迫った。



「俺なら、俺だったら……そうはしねえ。本気になった女なら、何があっても離したりしねえ……絶対に」



その瞳が、ふと寂しげに揺らいだ。

“何か”を思い出したように。
“何か”を、思い描いたように。


私が見逃さなかったくらいだから、きっとジローさんも感じ取っていた。



「トラ、お前……引きずってんのか、まだ」



沈黙を破り、ジローさんが静かに口を開いた。
どこか優しく、少しだけ痛みを滲ませた声色だった。

ジローさんの言葉に、タイガはまるで自分の中の何かに気づいたように、僅かに目を見開いた。



「お前が“色”を変えねえのも、そのせいだろ。過去にこだわってんのは……お前もじゃねえのかよ」



死んだように濁っていた目が、いま再び光を帯びる。

ジローさんの表情に、生気が戻っていく。


タイガを見据えるその眼差しは、猛る獣のように力強く、それでいてどこまでも美しかった。

誰もあの瞳からは、逃れられない。


──ジローさんが、目を醒ました。


何もかもを曝け出し、揺さぶり挑み続けたタイガが、彼を呼び戻したんだ。

鷹の目に射竦められたタイガは、何も言わず黙り込む。

二人はしばらく、言葉ではなく視線を交わすだけだった。


やがて先に動いたのは、タイガだった。

小さく舌打ちして、ジローさんを突き放すように手を離し、背を向けた。



「だったら、何だよ。俺はてめえとは違う」



タイガの声は、思ったよりも落ち着いていて。

どこか穏やかだった。