だから探した。
何日も、何日も、街中を歩き回った。
お兄ちゃんの生きた街を。
お兄ちゃんと私の思い出が、詰まった街を。
よく行った公園も、夕暮れの街を見渡せる丘も──お兄ちゃんと過ごした場所、すべてを探した。
そのうち、ひょっこりお兄ちゃんが顔を出す気がして。
“バーカ、俺が死ぬわけねえだろ?ちょっとももを驚かしてやろうと思っただけだよ”
そんなふうに笑って、何でもなかったみたいに現れる。
そんな気がしてた。
……でも、違った。
どこを探しても、どれだけ走り回っても、お兄ちゃんの姿はなかった。
もうお兄ちゃんは、この世界にいない。
私が生きる世界から、旅立ってしまったんだって……気づいた。
街は動いて、人々はそれぞれの生活を続けていく。
時計の針も止まらず、一秒一秒を刻み続ける。
私だけが……止まっていたんだ。
私だけが、“お兄ちゃんが生きていた頃の街”にしがみついて、進めなかった。
二度と戻らない。
二度と帰ってこない。
『さよなら』も、『ありがとう』も。
そして『大好き』も……伝えられなかった。
お兄ちゃんの死を現実として受け入れた時、残ったのはどうしようもない喪失感と、空虚感だけだった。
太陽を失ったら、どうすればいいの?
私の日だまりは、もう消えてしまったの?
何をする気も起きず、立ち上がることもできず、終わりのない悲しみと絶望に打ちひしがれていたあの日々が……今になって私の胸をかき乱した。
ジローさんも、私と同じだったんだ。
生きる支えだった響兄ちゃんが、死んだ
そして──その原因が、自分なのだと。
苦しんで、責めて、悩んで。
手を伸ばした先にあったのが、“死”という選択肢。
私はまた、失うんだろうか。
大切な人をなくして、自分が壊れてしまいそうになったあの感覚を……また味わわなければならないんだろうか。
たまらなく不安で、怖かった。
「大丈夫だ」
──その時、はっきりと聞こえた。
私がずっと求めていた、その言葉が。
「お前の目に映ってるのは何なんだよ。生きてんだろ、ジローちゃんは。ちゃんと生きてきたんだよ。これからも、生きるんだよ」
力強い声だった。
芯の通ったその響きは、私の不安を一蹴してしまうほど凛としていて、何の迷いもなく言い切ってくれた。
「だから、大丈夫だ」
私の頭に、ぽんと置かれる大きな手。
欲しかった温もりをくれたのは──優しい瞳をした、ハイジだった。


