気まぐれヒーロー2




「だったら!!」



ジローさんを見つめていた私は、突然張り上げられた大声に思わず身を震わせた。

タイガの声だった。


「一番てめえがよくわかってんじゃねーのか!!あれだけ響さんと過ごして……あの人がどんな人か、お前は誰よりも知ってるはずだろ」


悲しいのは、辛いのは……私だけじゃない。

タイガもだ。
彼もまた、闇から抜け出せないジローさんを嘆いている。

真剣に、ジローさんと向き合ってるんだ。


「なんでお前はそうなんだよ……。なんで、いつも自分から“独り”を選ぶんだよ……!!」


タイガは、誰よりもジローさんを理解している。
そして理解しようとしている。

感情を押し殺し、本心を閉ざすジローさんに、タイガは真正面からぶつかっていく。

ジローさんが心を晒けだせないのなら、自分がそうやって、彼の“芯”を揺さぶろうとしてるんだ。

それが、タイガなりのやり方。

こんなふうにジローさんに挑めるのも、心に呼びかけられるのも、対等でいられるのも……。
唯一、タイガだけなんじゃないかと思った。


「大丈夫、だよね……ジローさん、大丈夫なんだよね……?」


話しかけているのは自分じゃないのに。
その言葉は、自分に言い聞かせるためのものだった。


安心させてほしかった。
誰かに『大丈夫だよ』って、言ってほしかった。

それが誰だっていい。

ただ、誰かの温もりに、優しさに触れたかった。

そうじゃないと、指の先から全身が凍りついてしまいそうで……立っていられなくなる気がした。



“響が……事故で……”



三年前──響兄ちゃんが亡くなった日。

お兄ちゃんが事故にあったと連絡を受けたお母さんの、今にも消えてしまいそうな声が……
昨日のことのように生々しく、私の耳に蘇る。


お兄ちゃんが死んだ。

そんなの、嘘だって思った。
信じなかった。信じたくなかった。


だって、あんなに元気だったのに。
あんなに明るく笑って、たくさん楽しい話を聞かせてくれたのに。


私に満天の星を見せてくれるって……約束したのに。


その日を楽しみにしてた。
また、会える。いつでも会える。


そう思ってたんだ。


当たり前に、響兄ちゃんに会える“明日”が来るって──。