「だったら!!」
ジローさんを見つめていた私は、突然張り上げられた大声に思わず身を震わせた。
タイガの声だった。
「一番てめえがよくわかってんじゃねーのか!!あれだけ響さんと過ごして……あの人がどんな人か、お前は誰よりも知ってるはずだろ」
悲しいのは、辛いのは……私だけじゃない。
タイガもだ。
彼もまた、闇から抜け出せないジローさんを嘆いている。
真剣に、ジローさんと向き合ってるんだ。
「なんでお前はそうなんだよ……。なんで、いつも自分から“独り”を選ぶんだよ……!!」
タイガは、誰よりもジローさんを理解している。
そして理解しようとしている。
感情を押し殺し、本心を閉ざすジローさんに、タイガは真正面からぶつかっていく。
ジローさんが心を晒けだせないのなら、自分がそうやって、彼の“芯”を揺さぶろうとしてるんだ。
それが、タイガなりのやり方。
こんなふうにジローさんに挑めるのも、心に呼びかけられるのも、対等でいられるのも……。
唯一、タイガだけなんじゃないかと思った。
「大丈夫、だよね……ジローさん、大丈夫なんだよね……?」
話しかけているのは自分じゃないのに。
その言葉は、自分に言い聞かせるためのものだった。
安心させてほしかった。
誰かに『大丈夫だよ』って、言ってほしかった。
それが誰だっていい。
ただ、誰かの温もりに、優しさに触れたかった。
そうじゃないと、指の先から全身が凍りついてしまいそうで……立っていられなくなる気がした。
“響が……事故で……”
三年前──響兄ちゃんが亡くなった日。
お兄ちゃんが事故にあったと連絡を受けたお母さんの、今にも消えてしまいそうな声が……
昨日のことのように生々しく、私の耳に蘇る。
お兄ちゃんが死んだ。
そんなの、嘘だって思った。
信じなかった。信じたくなかった。
だって、あんなに元気だったのに。
あんなに明るく笑って、たくさん楽しい話を聞かせてくれたのに。
私に満天の星を見せてくれるって……約束したのに。
その日を楽しみにしてた。
また、会える。いつでも会える。
そう思ってたんだ。
当たり前に、響兄ちゃんに会える“明日”が来るって──。


