気まぐれヒーロー2




人は皆、自分の限界を弁えている。
自分の器を。

生きていくうえで、自分の器じゃ受け止めきれないと判断して投げ出すことは、決して悪いことじゃない。

そうやって現実と折り合いをつけて、みんな必死で生きてる。

だけど時には、逃げちゃいけない場面に遭遇することがある。

納得させて終わらせられない時が、誰にだってあるんだ。

自分の限界を決めるのも、まだやれると踏ん張るのも、自分自身。


可能性を握っているのは、他の誰でもない。自分だけなんだ。



「まだ、死のうと思ってんのか。まだ……んなクソつまんねーこと考えてんのか、てめえは!!」



熱の籠もったタイガの眼差しに、声に、ジローさんは……睫毛を伏せた。



「どれだけみっともねえ傷を増やしゃあ、気が済む。もう数えんのもめんどくせえぞ」



その時、私は初めて知った。

出逢う前の彼を。


ジローさんが、自ら命を絶とうとしていたことを。


それも一度だけじゃない。

何度も何度も、命を捨てようとしていた。


この世に、生きる希望を見出せなくて──。



飛野さんが言った。



“怖くても、目を逸らすな”



最初は、怖かった。


タイガがジローさんに拳を振るったこと。

タイガの見たことのない顔も、聞いたことのない声も。

男にしかわからない世界も。



「……俺には、響さんが全てだった」



でも今は、ただ悲しかった。

底のない悲しみだけが、胸の奥を突き上げる。

鋭利な刃物のように、心をズタズタに切り裂いていく。



“俺の永遠の憧れ”



大好きな響兄ちゃん。

そんな響兄ちゃんが、ジローさんにとっては生きる“理由”だったんだ。

真っ暗な世界にいたジローさんに、響兄ちゃんは光だったのかもしれない。

私にとって、響兄ちゃんが太陽だったように。

私よりも長い間傍にいて、私よりも響兄ちゃんを知るジローさんには……。


置き去りにした過去に、何があったの?

私には、わからない。
わかるはずがなかった。

自ら“死”を選ぼうとしたジローさんの苦痛が。
それしか選択肢がなかった、彼の絶望が。


ただ漠然と「人は生きるもの」だと思いこみ、疑いもしなかった私に。


どれだけの“死にたい夜”を彷徨い、越えてきたの?

どれだけ……出口の見えない闇を、歩き続けてきたの?