気まぐれヒーロー2




「太郎さんに、何か言われたんですか……?」


唐突な彼の態度に、心当たりがあるとすれば、その人しかいなかった。

ジローさんのお兄さん。
私を白鷹家に招いて、響兄ちゃんとの思い出を語ってくれた。


あの夜、太郎さんは私に一つの忠告をした。



“俺は君があいつらと一緒にいるのは反対だ”

“あいつらとは……一緒にいない方がいい”



それは私を思ってくれた上での、言葉だった。
余りにも世界が違いすぎる彼らと、私への危惧だったはずだ。


だけど、私は決めた。


彼らと出会い、自分の目で見て、心で感じて……答えを出した。


離れたくない。絆を断ちたくない。


一緒に、生きていきたいって──。


まだ太郎さんには報告していなかったから、もしかすると、彼がジローさんに私と距離を置くよう言ったのかもしれない。

私からではなく、彼らの方から離れていくように。


けれど、



「アイツは関係ねえ。俺が決めたことだ」



その推測は、あっけなく否定された。
そしてそれは、私をさらに深い悲しみへと追いやるだけだった。


決めたのは、ジローさん。

太郎さんでも他の誰でもなく……彼が、私との間に線を引いた。



「お前が抱えてる問題は、俺が解決してやる。だからもう何も心配しなくていい。元の生活に戻れ」



ジローさんの声は淡々としていて、無機質だった。


違う。そんなこと、望んでない。

私はただ、傍にいたいだけなのに。


『嫌だ』と叫べばよかったのかな。

泣いて、喚いて、噛みつけば、何か変わったのかな。




「もう遅え、帰れ。送ってくから」




なくなっちゃう。


本当に、これで最後になっちゃう。


ここで黙って身を引いたら、二度と──
彼らと笑い合うことも、馬鹿を言い合うこともできなくなる。



「……はい」



それなのに、何も言えなかった。

ジローさんに、受け入れられないという意思を示すことができなかった。


彼の眼差しが作り出す威圧的な空気が、私の言葉を封じる。

俯いて、灰色のコンクリートの床を見つめることしかできなかった。


情けなくて、唇を噛む。


行きたくない、終わりたくない。

心からの叫びが、足を動かなくさせる。





「文句は言わねえ。その代わり──」





突然、ゾクリとするほど低く、重たい声が頭上から響いた。


ジローさんじゃない。


この声は……





「一発、殴らせろ」





タイガだ。



顔を急いで上げたのと、金色の閃光が視界を走ったのは、ほぼ同時だった。


速すぎて、何が起きたのかわからなかった。


風を切る音が鼓膜を震わす。

次の瞬間、目に飛び込んできたのは──

ジローさんの頬を(えぐ)るタイガの拳。
そして轟音と共に、派手に床に叩きつけられる彼の姿だった。