単刀直入に切り込んだタイガに、朝美は言葉を詰まらせ、萎縮してしまっていた。
彼女は情報通で、“黒鷹”のことだって私に教えてくれた。
だけど──それは所詮“噂”だった。
何も知らない人たちが、勝手に尾ひれをつけて面白がり、触れて回っているだけの話。
少なくとも私は……そう思ってる。
彼らを、信じてる。
だとしても、ジローさん達が周囲から恐れられるには、それなりの理由があるんだろう。
他校の生徒に狙われるほどに、彼らはただの“噂”で片づけられない存在なんだ。
朝美はそんな“黒鷹”の名前を、私なんかよりもずっと聞いてきただろう。
きっと彼女にとって“黒羽大駕”は、憧れでありながらも、同時に“触れてはいけない”存在なのかもしれない。
向けられる視線は、自分を快く思っているものではないのだから──。
そしてタイガの言葉は、私自身がずっと聞きたかった質問でもあった。
でも、聞くのが怖かった。
もし本当に……朝美が、私を罠にかけていたとしたら。
その事実を認める勇気なんて、私にはなかった。
卑怯かもしれない。
けど今だけは、タイガが代わりに問いかけてくれることで、私はただ、彼女の答えを待つことしかできなかった。
「ちが、違うんです!アサミはただ……」
狼狽えながら何かを訴えようとする朝美は、涙ぐんでいる。
そんな彼女に注がれるのは、“鷹”たちの無情な、容赦のないの視線の群れ。
これじゃ、何の解決にもならない。
厳つくてコワモテの男達に囲まれれば、足が竦んでしまうのは当然のこと。
こんな状況で“本当のことを言え”なんて、酷だと思った。
朝美が空気の読めない女王だろうとタコさんだろうと、彼女だって一人の女の子なんだから。
よってたかって追い詰めるようなやり方は、なんか違う。
そう思った瞬間、体が勝手に動いていた。
私は朝美の正面に立った。
男たちの凶暴な視線を遮るために。
「朝美、お願い。本当のことを話して。私に、正直に話して」
なるべく彼女が話しやすいよう、口元に笑みをのせる。
本当は怖かったけど、それでも……私は真実が知りたかった。
朝美は私の目を見て、今にも泣き出しそうに唇を震わせ、話し出した。
「昨日ね、咲妃ちゃんに言われたの。アサミにお願いがあるって。咲妃ちゃん、笑って言ってた。『もう花鳥さんのことは気にしてないから』って。それで……男の子紹介されて……」
私は口を噤み、朝美の話に神経を集中させていた。
感情的にならないように。
最後までちゃんと、冷静に聞けるように。


