胸に、杭を打ち込まれたような衝撃が走った。
タイガの妖しくも危うい眼差しが、私を強く縛りつける。
“キレイゴト”
その言葉に、どんな意図が込められているのか。
どう答えればいいのか。
私には、わからなかった。
「どうしたの?急に……どうして、そんなこと言うの……?」
戸惑いを隠せずに問い返す。
心を強く揺さぶられているのは、間違いなかった。
ここに来てから、タイガのひとつひとつの言動に心臓を掴まれてばかりだ。
エロばっかりじゃない、悪ふざけもしないタイガ。
今の彼は、私を真正面から追い詰めてくる。
理由も見えないまま、責めるような視線に口をつぐむしかなくて。
私、何か気に障ること言ったのかなって。
タイガを苛つかせるようなこと、しちゃったのかなって心配になる。
「“できない”?なに甘ったれたこと言ってんだ。俺は“やれ”っつったんだよ。女じゃ素手は無理だろうからよ、わざわざソイツを渡してやったんだろうが」
タイガは顎でコンクリートに転がる鉄パイプを指し、凄むように睨みつけてくる。
素直に怖いと、思った。
おとぼけな姿に慣れて、忘れていた。
この人が、“恐れられる存在”だということを。
「関わるな」「近づくな」と、噂される男だってことを。
「本気、なの?ねえタイガ、本気で私に命令したの!?違うでしょ!?だって──」
「ジョーダンとマジにならねーといけねえ時の区別くらいついてる」
嘘だ。
そんなの、絶対に嘘だ。
「お前が俺らに、なに夢抱いてんのか知んねえけどよ……いい加減目ェ覚ませ」
聞きたくなかった。
こんな言葉を、タイガの口から。
確かに私は、彼らの全てを知るわけじゃない。
彼らが何をしてきたのか。
なぜ……みんなに避けられているのかも。
そうだとしても。
一緒にいたいと、思わせてくれた。
信じさせてくれる一面を、見てきたから。
だから、私は──心から彼らの仲間でありたいと願ったのに。
「……言えんのか?」
「……え?」
ふと、静かに呟くように、タイガが一言零した。
聞き取るのもやっとの掠れた声に、私は恐る恐る顔を上げる。
真っ直ぐな瞳が、そこにはあった。
強い意志を携え、私を射抜く。
「コイツらにマワされてたら、お前は……今と同じ台詞を言えてたか?」
そうして、私はやっと気づくんだ。
タイガの瞳の奥にあるもの、声の静けさに込められた想い。
厳しさの中に隠された、温もりに。
咎めるような眼光には、確かな純粋さがあった。
無知なまま彼らの世界へ飛び込もうとする私を、タイガは──思いやってくれていた。


