気まぐれヒーロー2



胸に、杭を打ち込まれたような衝撃が走った。


タイガの妖しくも危うい眼差しが、私を強く縛りつける。



“キレイゴト”



その言葉に、どんな意図が込められているのか。

どう答えればいいのか。

私には、わからなかった。



「どうしたの?急に……どうして、そんなこと言うの……?」



戸惑いを隠せずに問い返す。

心を強く揺さぶられているのは、間違いなかった。

ここに来てから、タイガのひとつひとつの言動に心臓を掴まれてばかりだ。


エロばっかりじゃない、悪ふざけもしないタイガ。

今の彼は、私を真正面から追い詰めてくる。

理由も見えないまま、責めるような視線に口をつぐむしかなくて。

私、何か気に障ること言ったのかなって。
タイガを苛つかせるようなこと、しちゃったのかなって心配になる。



「“できない”?なに甘ったれたこと言ってんだ。俺は“やれ”っつったんだよ。女じゃ素手は無理だろうからよ、わざわざソイツを渡してやったんだろうが」



タイガは顎でコンクリートに転がる鉄パイプを指し、凄むように睨みつけてくる。



素直に怖いと、思った。



おとぼけな姿に慣れて、忘れていた。

この人が、“恐れられる存在”だということを。

「関わるな」「近づくな」と、噂される男だってことを。



「本気、なの?ねえタイガ、本気で私に命令したの!?違うでしょ!?だって──」
「ジョーダンとマジにならねーといけねえ時の区別くらいついてる」



嘘だ。

そんなの、絶対に嘘だ。



「お前が俺らに、なに夢抱いてんのか知んねえけどよ……いい加減目ェ覚ませ」



聞きたくなかった。

こんな言葉を、タイガの口から。


確かに私は、彼らの全てを知るわけじゃない。

彼らが何をしてきたのか。

なぜ……みんなに避けられているのかも。



そうだとしても。

一緒にいたいと、思わせてくれた。

信じさせてくれる一面を、見てきたから。


だから、私は──心から彼らの仲間でありたいと願ったのに。



「……言えんのか?」

「……え?」


ふと、静かに呟くように、タイガが一言零した。

聞き取るのもやっとの掠れた声に、私は恐る恐る顔を上げる。


真っ直ぐな瞳が、そこにはあった。


強い意志を携え、私を射抜く。



「コイツらにマワされてたら、お前は……今と同じ台詞を言えてたか?」



そうして、私はやっと気づくんだ。


タイガの瞳の奥にあるもの、声の静けさに込められた想い。

厳しさの中に隠された、温もりに。

咎めるような眼光には、確かな純粋さがあった。


無知なまま彼らの世界へ飛び込もうとする私を、タイガは──思いやってくれていた。