赤っ恥をかいたはずなのに、ジローさんが学校で見せる“ご主人様”の顔を覗かせてくれたから。
ハイジや飛野さん、タイガもいつもの彼らの顔に戻っていたから。
──元通りになったんだ。
そう思えて、安堵のため息が漏れた。
でも。
「ジロー……オメーは甘ェな、どこまでも」
タイガの声色が、さっき私に“やれ”と脅しかけたあの声へと、再び堕ちていく。
耳に触れた瞬間、危うさを孕んだ響きが胸の奥をざわつかせ、不安が一気に広がっていく。
「……トラ、なんでコイツ連れてきた」
ジローさんの眼差しもまた、静かに獰猛さを帯びていく。
それが……哀しい。
タバコに火を点けるタイガの手元で、ライターの炎が揺らめいた。
フザけてるのかと思いきや、彼らは一瞬で“鷹”へと姿を変える。
私をからかっている時ですら、その心の奥底には獣としての性が、目を覚ます瞬間を待ちわびている。
いつも置いてけぼりにされるのも、そんな彼らから目を背けたくなるのも、私だけ。
人に恐れられる彼らなのに私は……どうしても、希望を捨てきれない。
「てめえの女だろ」
タイガは白煙を吐き出し、わざと時間を置いてから、ジローさんへ尖った視線を投げた。
タイガまでも……私を“ジローさんの女”だと言う。
あの夜、タイガはあの美女と一緒にいたっていうのに。
それに、私をペット扱いしないのも……本気なんだと思った。
苛立ちの色を帯びるタイガの瞳。
それは、黙り込んだままタイガを見据えるジローさんへ向けられているのかもしれない。
何の反応も示さない彼に、タイガは痺れを切らしたのか小さく舌打ちし、視線を逸らした。
──そして今度は私へと、矛先を変える。
「なあ……タマちゃんよ、」
抑えられた声。挑発的な目つき。
心臓が大きく脈打ち、逃げ腰になっていく。
その先を言ってほしくないと願ってしまう。
だけどタイガが、私の思惑を察するはずもない。
「お前はキレイゴトばっかだな」
フッと、タイガは私を嘲笑った。


