気まぐれヒーロー2




赤っ恥をかいたはずなのに、ジローさんが学校で見せる“ご主人様”の顔を覗かせてくれたから。

ハイジや飛野さん、タイガもいつもの彼らの顔に戻っていたから。


──元通りになったんだ。
そう思えて、安堵のため息が漏れた。


でも。



「ジロー……オメーは甘ェな、どこまでも」



タイガの声色が、さっき私に“やれ”と脅しかけたあの声へと、再び堕ちていく。

耳に触れた瞬間、危うさを孕んだ響きが胸の奥をざわつかせ、不安が一気に広がっていく。



「……トラ、なんでコイツ連れてきた」



ジローさんの眼差しもまた、静かに獰猛さを帯びていく。

それが……哀しい。


タバコに火を点けるタイガの手元で、ライターの炎が揺らめいた。


フザけてるのかと思いきや、彼らは一瞬で“鷹”へと姿を変える。

私をからかっている時ですら、その心の奥底には獣としての性が、目を覚ます瞬間を待ちわびている。


いつも置いてけぼりにされるのも、そんな彼らから目を背けたくなるのも、私だけ。


人に恐れられる彼らなのに私は……どうしても、希望を捨てきれない。



「てめえの女だろ」



タイガは白煙を吐き出し、わざと時間を置いてから、ジローさんへ尖った視線を投げた。


タイガまでも……私を“ジローさんの女”だと言う。

あの夜、タイガはあの美女と一緒にいたっていうのに。

それに、私をペット扱いしないのも……本気なんだと思った。


苛立ちの色を帯びるタイガの瞳。

それは、黙り込んだままタイガを見据えるジローさんへ向けられているのかもしれない。

何の反応も示さない彼に、タイガは痺れを切らしたのか小さく舌打ちし、視線を逸らした。


──そして今度は私へと、矛先を変える。



「なあ……タマちゃんよ、」



抑えられた声。挑発的な目つき。

心臓が大きく脈打ち、逃げ腰になっていく。
その先を言ってほしくないと願ってしまう。


だけどタイガが、私の思惑を察するはずもない。



「お前はキレイゴトばっかだな」



フッと、タイガは私を嘲笑った。