ジローさんって、何なんだろう。ほんとに何考えてるんだろう。
『ジロー解明図鑑』なんてものがあったら、迷わず買っちゃう。それくらい、掴めない人。
それにしても……私、ジローさんといたら確実に寿命すり減ってく。心臓もたない。
自覚してるのか、無自覚なのか……。
……いや、絶対ジローさんは無自覚だ。
私を瞬殺しちゃうほどの色気を、お構いなしに垂れ流してくるんだからタチが悪い。
ほんと、自覚してほしい。
自分がちょっぴり流し目しちゃうだけで、女の子の心臓が発作起こしちゃうってこと。
ある意味、ジローさんも凶器なのかも……。
未だに手を離してくれないジローさんに赤面してもじもじしてると、彼は私の耳元に唇を寄せ、追撃を仕掛けてきた。
“『おて』しろよ”
吐息が微かに触れる。
ゾクゾクしてしまうのがバレないよう、必死なのに。
“なっ、なな、何言ってんですか!!こんなとこでできるわけないでしょう!?”
“じゃあ舐めろよ”
“だから、む、無理ですってば!!それに『じゃあ』の意味がわかんないんですけど!?『じゃあ』の使い方間違ってると思うんですけど……!!”
“お前が舐めねえんなら、俺が舐めるよ。舐めさせろよ”
不敵な笑みを浮かべるジローさんに見惚れ……じゃなくてヒヤリとする。
何を血迷ったのか、私は。
「な、舐めちゃダメ!!!」
驚くほど威勢の良い声が、咄嗟に飛び出した。
静まり返る倉庫に、見事なくらい反響する。
微妙な間の後、あちこちからわざとらしい咳払いが聞こえた。
──なんかこういうの、前にもあった気がする。
心を無にした。
『え~、私今何か言ったっけ~?』って顔をして、平然を装ってみた。
ハイジと目が合うと「あ、靴紐が」とか言いながら、解けてもない靴紐をしゃがんで結び直していた。
飛野さんにいたっては、
「こ、高校生のうちからそーいう不純な関係は俺は良くないと思うぞ!?もっとこう、な!!年相応の付き合い方ってもんがあるだろう!!」
と、まるで年頃の娘を心配する父親のようなセリフを、動揺しながら口にしていた。
顔もトマトみたいに赤かった。
そして最後は──
「ベッドの中でしてくんねえかな~そんな卑猥なやり取りはよ~。あ、もしやアレかオメーら。そういうプレイか?人に見せつけねえと興奮しねえとか、そーいう性癖か!?マゾか!?真性のマゾなのか!?すげえ迷惑だなオイ!!」
得意分野だけあって、一番生き生きしていたのはタイガだった。


