そりゃ、そうだけどさ。
ハイジに忠告されてたのに私が迂闊だったせいで犯罪に巻き込まれそうになって、みんなに迷惑かけたけどさ。
私が生きてきたのは、平凡な世界なんだもん。
怖い世界じゃないもん。暴力が吹き荒れるような世界に、生きてないもん。
ハイジにとってはそれが当たり前の世界だって、私は……すごく怖いんだから。
不安になるの、しょうがないじゃん……。
「素直じゃねえな、お前は」
「何がだよ」
しゅんとする私の横で……いや、私より遥かに背の高い彼らは、頭上でやり取りしていた。
飛野さんが珍しくにやりと悪戯っ子みたいな笑みを浮かべ、それに対してハイジが怪訝そうに顔をしかめる。
「本当は心配で心配でたまらねえって、言やあいいのに」
「──はあ!?」
「わっかりやすい性格だよなあ、お前も。カワイーじゃねえの」
「何言い出すんだあんた!」
なんと……!
いっつもジローさんやタイガにイジられている飛野さんが、逆に人をイジっている!!
これ、超貴重な場面じゃない!?
ひーちゃんの逆襲!?
でも逆襲する相手間違ってない!?
ひーちゃん、金髪デビルじゃないの……!?緑ボーズでいいの!!?
「ハイジ、俺はお前のそーいうとこ嫌いじゃねえよ。クソ生意気な黒羽に比べりゃあ、よっぽど可愛げがあるしな」
「だから、なんでそうなんだよ!?」
たじたじのハイジに、ニヤニヤの飛野さん。
すると──
「あのよ~お二人さん。ここ仲良しクラブじゃないんですけど~?遠足来てるわけじゃないんでぇ、お口チャックしてくれません~?」
タイガの、意欲を削がれたような横やりが入った。呆れた目をしているのがわかる。
それもそうだ。
この開けた大空間で、壁際にずらりと並ぶバイクにもたれたり、床に座り込んでいるコワイおにーさん方。
倉庫入り口付近には沈黙を貫く、ハレルヤさん。
そして中心には、鷹の餌食になっている翔桜の男達。
ジローさんだって、一言も喋らないけれどピリピリしてる。
タイガもエロモードじゃなく、その顔は引き締まり、目つきだって凛々しい。
エロ帝王がエロを捨てちゃってるくらいなんだから、今がどれだけ重要な場面かは、私にだって見当がつく。
その空気の中で、緑と黒のコンビ──なかなかお目にかかれない組み合わせの二人が、それに加えて『ひーちゃんの逆襲』なんてレア展開を繰り広げている。
「怒られたな」
「あんたのせいだろ!?」
尚も楽しそうな飛野さんは、大物だと思った。
そして、ついに。
「トラ、俺がやる」
王様──“黒い鷹”が、重たい口を開いた。


