それよりも……気掛かりなのは、ハイジが「覚えとけ」と言った、“ジャコウ”。
翔桜高校の生徒であるシンマという男が、そのチームを仕切っているらしい。
彼らの言う“チーム”の実態は私にはまだ掴めないけれど、そのジャコウも黒鷹と同じようなものなんだろうか。
覚えとけ、とハイジが私に忠告したのは、きっと私にも関わることだから。
そうじゃなきゃ、わざわざハイジは私の不安材料になるようなこと言わないはずだ。
「ねえ、その蛇狡って……あんた達にとって何なの?……危ない、の?」
殺気立つこの場面では、意識せずとも自然と声を潜めてしまう。
私はハイジを見上げて問いかけた。
そして返ってきた言葉に、聞かなきゃよかったと後悔することになる。
“危ねえなんてモンじゃねえ。ヤツらに目ェつけられたら、終わりだと思え”
──何が終わりなの?
そんな野暮なことは聞かない。
どうして、とんでもなく物騒なセリフを当たり前みたいに言えちゃうんだろうとドキドキするのは、きっと私だけだ。
ハイジにとっては、単に聞かれたから答えただけのこと。
それでも、彼らと“蛇狡”が関係しているのは事実。
つまり“黒鷹”もまた、相当危険な存在だということ。
しかも……ハイジの口振りからすると、まるで“蛇狡”が私を狙っている可能性まで示唆されているみたいで。
そんなわけないと自分に言い聞かせても、じわじわ心細さは募っていくばかりだった。
「心配すんな」
考え込む私の頭上から、ふわりと声が降りてきた。
宥めるような、穏やかで、それでも力強い声。
すぐにその主が誰だかわかった。
大人な彼の、声だって。
「お前に危害が及ぶようなことはねえ。俺らがそうはさせねえよ」
見上げれば、そこに飛野さんの黒い瞳。
きっと私の曇った顔を見て、安心させようとして言ってくれたんだと思う。
裏を返せば、やっぱり私も“蛇狡”と接触する可能性があるかもしれないってことだろう。
でも……飛野さんが笑ってくれるから。根拠はないけど大丈夫なんだって思えた。
飛野さんの笑顔には、それだけの力があった。
「あめーよ飛野さん。コイツ危なっかしいんだからよ、ちょっと脅しとくくらいがちょーどいいんだって」
せっかく飛野さんの心遣いで緊張がちょっぴり解れたっていうのに、その後のハイジの一言で全部台無しになった。


