タイガは胸元からタバコの箱を取り出し、一本を咥えてライターで火を点けた。
白い煙を吐き出し、追求の眼差しを翔桜の男たちに突きつける。
答えないと、何をするかわからない。
目だけでそう語るタイガに、たまらず翔桜の一人が声をあげた。
「違う、俺達は“蛇”じゃねえ!!シンマとも一切関係ねえ、本当だ信じてくれ!!」
男は必死に訴えかける。
その顔には一切の余裕がなく、本気でタイガに許しを請う目をしていた。
それほどに、彼らにとってタイガ……いや“鷹”という存在は、自分の身を脅かすものなんだと思った。
「翔桜に、神馬って男がいる」
急に背後から聞こえた声に、思わず肩が揺れる。
声の主はハイジだった。
恐る恐る振り向いた私には目もくれず、ヤツもまた翔桜の男達に視線を定めていた。
さっきとは別人みたいなハイジ。
きっと私だけがこの場で事情を知らないから、教えてくれようとしてる。
タイガが口にした“蛇”という言葉。
翔桜の男が叫んだ、シンマという名。
「そいつが頭張ってるチームが、“蛇”。正式な名は、“蛇狡”。覚えとけ」
“鷹”の顔で語るハイジは、いつになく真剣だった。
覚えとけって……私にも関係あることなの?
大体、チームって何なの?つまりは……暴走族ってこと?
……この“黒鷹”もそう、なんだよね?
え、じゃあなに!?
夜な夜な、イカついバイクや車を乗り回して暴走してたりすんの!?
派手派手な特攻服着て、背中に『夜露死苦』とか刺繍されちゃってるわけ!?
ちょっと待ってよ、じゃあハイジだったら『華流飛酢上等』とか入っちゃったりしてんの!?カルピスまで漢字になっちゃってたり!?
ジ、ジローさんだったら……『犬命』とかだったらどうしよう……!!むしろ『多魔命』だったら……ちょっとだけ嬉し……くない!!
「お前見てると飽きねえな」
背中に『多魔命』の金刺繍を背負った特攻服姿のジローさんを想像してたら、ハイジが嫌味ったらしくそう言ってきた。
私が妄想の世界に入り浸っているのを、わかった上での発言だった。
……私、どんな顔してたんだろ。
妄想してる時、端からみたらどんな感じなんだろう。
相当アブナイ人かもしれない。
今度から気をつけよう……とか誓っても意識して治るもんでもなく。
気がつかないうちに妄想世界に飛び込んでるもんだから、注意のしようがないことを悟り、さっさと諦めた。


