気まぐれヒーロー2




タイガは胸元からタバコの箱を取り出し、一本を咥えてライターで火を点けた。

白い煙を吐き出し、追求の眼差しを翔桜の男たちに突きつける。


答えないと、何をするかわからない。


目だけでそう語るタイガに、たまらず翔桜の一人が声をあげた。



「違う、俺達は“蛇”じゃねえ!!シンマとも一切関係ねえ、本当だ信じてくれ!!」



男は必死に訴えかける。
その顔には一切の余裕がなく、本気でタイガに許しを請う目をしていた。

それほどに、彼らにとってタイガ……いや“鷹”という存在は、自分の身を脅かすものなんだと思った。



「翔桜に、神馬(しんま)って男がいる」



急に背後から聞こえた声に、思わず肩が揺れる。

声の主はハイジだった。
恐る恐る振り向いた私には目もくれず、ヤツもまた翔桜の男達に視線を定めていた。


さっきとは別人みたいなハイジ。


きっと私だけがこの場で事情を知らないから、教えてくれようとしてる。


タイガが口にした“蛇”という言葉。

翔桜の男が叫んだ、シンマという名。



「そいつが頭張ってるチームが、“蛇”。正式な名は、“蛇狡(じゃこう)”。覚えとけ」



“鷹”の顔で語るハイジは、いつになく真剣だった。


覚えとけって……私にも関係あることなの?


大体、チームって何なの?つまりは……暴走族ってこと?

……この“黒鷹”もそう、なんだよね?


え、じゃあなに!?
夜な夜な、イカついバイクや車を乗り回して暴走してたりすんの!?
派手派手な特攻服着て、背中に『夜露死苦』とか刺繍されちゃってるわけ!?

ちょっと待ってよ、じゃあハイジだったら『華流飛酢上等』とか入っちゃったりしてんの!?カルピスまで漢字になっちゃってたり!?

ジ、ジローさんだったら……『犬命』とかだったらどうしよう……!!むしろ『多魔命』だったら……ちょっとだけ嬉し……くない!!



「お前見てると飽きねえな」



背中に『多魔命』の金刺繍を背負った特攻服姿のジローさんを想像してたら、ハイジが嫌味ったらしくそう言ってきた。

私が妄想の世界に入り浸っているのを、わかった上での発言だった。


……私、どんな顔してたんだろ。
妄想してる時、端からみたらどんな感じなんだろう。


相当アブナイ人かもしれない。
今度から気をつけよう……とか誓っても意識して治るもんでもなく。

気がつかないうちに妄想世界に飛び込んでるもんだから、注意のしようがないことを悟り、さっさと諦めた。