「何だぁ?ずいぶん楽しそうじゃねーか、俺らも混ぜてくれよ。なあミッチー」
「どうでもいい」
それまで倉庫の内部に充満していた笑い声が、この二人の声でピタリと鳴り止んだ。
入り口で眩いライトを背負って立つのは、あの金髪コンビ──タイガとハレルヤさん。
そしてその後ろには……私を襲った翔桜の男達の、憔悴しきった姿があった。
「主役がいねえと、宴も興醒めすんだろ」
彼らが現れると、それまで穏やかに流れていた時間が反旗を翻したようにピンと張り詰めた。
全員の目に宿る光も、野蛮なものへと変わっていくのが手に取るようにわかる。
翔桜の男達を射抜く眼差しは、まるで獲物を狙う鷹そのもの。
さっきまで笑い合っていた時が幻だったんじゃないかと思えてしまうほどに、空気は研ぎ澄まされ、警報を鳴らし始めた。
“鷹”の男達が野生へと変わりゆく中、私はタヌキのまんまだった。
訳もわからず、固唾を飲んでこの先の行方を案じるしかなかった。
「オラ、歩けっつってんだろが」
タイガが翔桜のメンバーの背中を蹴ると、よろめきながらも、重たい足取りで彼らは倉庫の中へと歩き出した。
きっと、ここからなんだ……本番は。
何の本番だとかは、答えられないけれど。
だけど“鷹”である彼らが集うのは、この時のためだったんじゃないかと思う。
だってもう、全員が一体化してる。
言葉を交わさずとも、望むものは同じ。
ハイジも飛野さんも、ジローさんも。
“鷹”の目を、翔桜の男達へと向けていた。
まだこういう彼らに慣れない私には、口を挟むこともできず、手に汗を握って成り行きを見守るしかできなかった。
“黒鷹”の男達の凶器ともいえる飢えた視線を浴びせられ、翔桜の六人は顔を上げることすらできなかった。
血が通ってないんじゃないかと思うほど顔面蒼白で、目線はコンクリートの床を右往左往して定まらない。
私はこの男達に乱暴されそうになったっていうのに……それでも彼らの身を案じてしまうくらい、その有り様は痛々しかった。
覚束ない足取りで進んでいた翔桜の男達は、倉庫の中央で立ち止まった。
黙って佇む“黒い鷹”の、数メートル手前で。
「膝をつけ」
タイガが命じると、男達は言う通りに膝立ちになった。
膝がコンクリートに当たる鈍い音が、静まり返った空間にやけに大きく響いた。
「待たせたな、獲物のお出ましだ」
翔桜の男を無表情で見下ろすジローさんに、タイガがそう告げた。
ゾッとするほど、狂気じみた笑みと共に──。


