気まぐれヒーロー2




「ふ、ふふっ……」


下を向き、肩を小刻みに揺らして不気味な笑いを漏らす。

ハイジから「何だよお前、また始まったのかお得意の妄想が」と、ビビり気味の声が飛んできた。


それから。
元気よく顔を上げると、ハイジはビクッとなった。

あからさまに、私の頭がイカレてるとでも言いたげな目つきのハイジ。


「待て。タヌキの呪いだけはやめろよ!?そーいう類だけはやめてくれよ!?」


完全に私がオカルトに走ってると決めつけているハイジは、引け腰だった。

ヤツが(ひる)んだスキに、私はヤツの手からペットボトルを奪い取る。


「おまっ……」


ハイジが目を見開いて制止しようとするのも構わず、ペットボトルの中でたぷんと揺れる残りの水を──


天井に顔を向け、一気に上から被った。


並々と顔に注がれる、冷たい水。

髪を潤し、肌を伝い、制服を濡らしながら全身に流れ落ちていく。


見ていた全員が、ぎょっとしているのがわかった。


それでも気持ちよくて、やめられなかった。


皮膚を這う水の感触に、体の細胞ひとつひとつが奮い立つようで、この身を(ゆだ)ねたかった。

わだかまりも、溜め込んだ思いも、この顔を飾る化粧すらも──全部流してしまいたかった。


ぽたりと最後の一滴が鼻の頭を滑り落ちた時……私はゆったりと、閉じていた瞼を持ち上げた。


今あるのは、爽快感だけ。




「あー、スッキリした!!」




暑い夜だから。

私の体を、透明で汚れのない水が冷やしてくれる。

鬱々していた気持ちを、洗い流してくれた。

髪の毛の先から、水滴が絶え間なく滴り落ちる。制服が肌に張りつく。
けれど、不快感はない。

自分でもちょっと大胆な行動に出たかな、とは思ったけれど。

後悔なんて一つもなく、むしろさっぱりして解放感に満たされた。



「……もも、お前つくづく読めねえ女だな」



額に張りついた前髪を掻き上げると、ハイジがどこか控えめに声をかけてきた。

本当に、理解できないというように。


そんなアイツに、私は空になったペットボトルを投げつけてやった。

一直線にハイジめがけて飛んでいくソレ。

見事にグリーンなアイツのおでこに、クリーンヒット。


「っ、何すんだてめえ!!」


予想通り、おでこを押さえながら噛みついてくるハイジに、返す言葉なんて決まってる。



「さっきのお返しよ、まりもっこり」

「!!」



毅然と、言ってやった。