私は今さらながら、とっても恥ずかしくて。
彼の顔を見れば昨日の宣言を思い出して、よくもまああんなセリフを口にしたなと、恥の大群に飲み込まれるばかりだった。
でも後悔はしてない。
そうしたからこそ、彼らとの距離をちょっとでも縮めることができたんじゃないかって、自己満足だけど思ってる。
そして……小春。
小春はたぶん、ケイジくんに──恋してる。
一生懸命、彼と話そうと努力してるのが伝わってくるから。
ビクつきながらも、噛みまくりながらも、彼に話しかけられたら返そうとしてる。
昨日聞いてみたところ、やっぱり私の予想通りかっちゃんは小春にとって“いいお友達”らしく、さらには「克也くん彼女いるよ?」とさらっと言っていた。
それを教えられた時は衝撃的で、「他の学校の子なんだって」と小春が何でもないことのように話すのがこれまた意外で。
かっちゃん……彼女いたのね。
でもよく考えてみれば、あんなにキューティーでオシャレなヤンキーくんなんだもん。
モテるだろうし、彼女がいるのもおかしくはない。
私が驚いたのは『かっちゃんに彼女がいた』という事実よりも、『彼女がいるのに小春とあそこまで親しくしてた』ってこと。
だってさ……朝も放課後も他の女の子を送り迎えしてるって、彼女の立場からしたらいい気はしないよね?
それもけっこうな頻度だよ?かなり仲良しさんだよ?
キューティーオーラ垂れ流しだよ!?
……けど、お互い恋愛感情を持たなかったら、仲良くたっていいのかな。
私は……イヤだけどな。
だってジローさんが、もし……
………………
…………
そこまで妄想しかけて、寸前でやめた。
今、ジローさんを想えば“あの女の人”のことが、頭を過ぎるから。
あの時の、押し潰されそうになった苦しさが、蘇るから。
それなのに……まだ彼への気持ちを捨てきれない自分が、会いたいなんて思ってしまう自分が、嫌になるんだ。
ケイジくんの前でしどろもどろになりながらも、頑張ってる小春の姿に自分を重ねて見てるのかもしれない。
ただ話せるだけで、視界に入れるだけで、笑ってくれるだけで、嬉しくてたまらないのに。
それももう……叶わない。
次にジローさんと顔をあわせた時、私はどうなるんだろう。
“ペット”でいられる?
“仲間”でいられる?
悩みは尽きなくて、私はそんな状態のまま昼休みを迎えた。

