気まぐれヒーロー2




「……わかってるよ、そんなの……。私だってそれくらい、わかってる……」


でも、ちょっとでも近づけるかなって、思ったんだ。

ジローさんの隣にいた、あの綺麗な女の人に。

お化粧さえすれば、私も少しくらいはあの人みたいになれるのかなって。

そうしたら、ジローさんに見てもらえるかもって……淡い期待を持ってた。

結局、意味なんてなかった。
余計に惨めになるだけだったのに。


中身は何一つ、変わってないのに……何を変えたつもりでいたんだろう。
本当はそんなこと、望んでなかったのに。

その結果、沢山の人に心配と迷惑をかけて。

その上、みんなの前でこんな醜態を晒して……。



「ほんと、バカみたい……」



自然と唇から言葉が零れる。

そんな私を、ハイジは冷静な眼差しで見ていた。



「私、何やってんだろ……!」



情けなくて居たたまれなくなった。

自分を責めることしかできなくて、頭ん中ぐちゃぐちゃで。


何でもっと、しっかりできないんだろう。

何で私、ちゃんとできないんだろうって。



「……タヌキはどう足掻いたって豹や獅子にはなれねえ。タヌキのまんまだ。けどよ、それの何が悪い」



俯く私に、やけに静かで心地の良い声が届いた。

顔を上げると、ハイジがまっすぐ私を見つめていた。



「タヌキにだって、いいとこいっぱいあんだろ。腹叩けば音出せるし、化けられるし、食ったらうめえし。マヌケな体型に癒されんじゃねえか」



……いや、どれもフォローになってないし。
それいいとこなの?

疑わしげな視線を送ると、ハイジは何だか偉そうに見下ろしてきた。



「綺麗にこしたことはねえけどよ、美人は三日で飽きるって言うだろ?それよりいいかお前、女は愛嬌だ。癒しをくれる女を、男は愛すんだよ」



いつもの調子で、ハイジは偉そうなまま続けていく。



「目指すんならそーいう女を目指せ。たまには俺に、可愛らしく微笑んでみせろよ」



なんかもう最後らへんは、ツッコミどころ満載だったけれど。

ハイジは少しずつ、私のよく知るハイジに戻っていく。


だから安心したんだ。

安心して、私は『俺様節』をかますハイジを見つめていた。

ハイジはきっと、見抜いてたんだ。

私の間違った背伸びの仕方を。
焦って、大事なことを見落としてたことを。

ジローさんを好きなこと、ハイジは知ってるから。そしてあの女の人のことも。

だから叱ってくれた。
荒っぽいやり方だけど、私は私のままでいいって説いてくれた。

ちょっと引っかかるとこはあったけど。


その瞳を見ればわかる。

怒った顔をしてても、目の奥は柔らかいから。

私のためを思って言ってくれたんだって、伝わってきた。


そして何より、私を私だと認めてくれたことが嬉しかった。


飾った外見じゃなく、普段の“私”を知った上で──そっちの“私”の方がいいと言ってくれたことが。


嬉しかったんだ。本当に。