気まぐれヒーロー2




「、ジローさ……」


唐突に変貌したジローさんに心細くなって、そっと彼を見上げた。


「っ……」


微かな息だけが口から漏れる。
声が声にならず、喉の奥で散ってしまった。


彼の──酷く苦しそうな表情に。


手が震えていたんだ。
ジローさんの、筋張った大きな手が。


震えているのは朝美に触れられた手だけで、その手を、彼はもう片方の手で強く握りしめ、震えを抑えていた。

息を荒げ、歯を食いしばって。

すごく辛そうで……見ている私にまで、その苦しみが伝わってくるかのようで息苦しくなった。



“ジローな……アイツ、女に対して根深いトラウマがあるんだ”



太郎さんが、あの日話してくれたこと。


ジローさんがなぜ、女の人を避けるのか。

原因は、わからないまま終わったけれど……思ったんだ。


たった少し手を触れられただけで、過剰ともいえる反応を見せた彼を目にして。

精神的なものだけじゃなく、もしかしたら……肉体的にも何かトラウマがあるんじゃないか、って。

触られるのが苦痛になるくらいのことを、されたんじゃないかって。

そうじゃなきゃ、こうはならない。

こんなにも……男の人が女の子を拒絶するわけがないんだ。


改めて知る、彼の傷の深さ。
癒えることのないトラウマ。

その目に帯びた、拭いきれない恨みや憎悪や怒り、悲しみ……あらゆる負の感情に。

私は尻込みしていた。
後ろ向きになっていた。


お兄ちゃんがそうしたように、私も彼を救ってあげたいと思った。
力になれるなら、なりたいと思った。


だけど……
私なんかの器で、受け止めてあげられるの?

ううん、その前に。そもそも、ジローさんは私を必要としてくれるの?

彼の傍に、いていいの……?


自問自答したって、答えなんか出るはずもないのに。何度も、何度も自分に問いかけていた。

ジローさんに直接聞く勇気もない私は……臆病だった。


静寂に染まる空間で、不意にジローさんが一歩、足を踏み出した。


床に座り込んでいる、朝美に向かって。