気まぐれヒーロー2




突き抜けるように高い天井。
倉庫全体を、煌々(こうこう)とした照明が照らしている。

内部は思った通り、体育館並みに広い。

数台の大型バイクが並んでいる。


辺りには、オイルとタバコの匂いが充満していた。

床には空き缶や鉄クズ、タバコの吸い殻などが散乱している。


倉庫内には、足が竦んでしまうくらいの大勢の男がいて。
チキンの代表みたいな私は腰を抜かしそうだった。

けれど騒ぐわけでもなく、彼らの表情は一様に緊張に染まっていた。


そんな中──




「おい、まだ見つからねえのかアイツは!!」




一人の男の怒号が、広大な空間に響き渡った。



私は、この声をよく知っている。


求めてやまなかった、声。

誰よりも好きだと思った人の、声。



「おー、今日は一段と派手に暴れ回ったんだな。活きがいいじゃねえか、死人のわりに」



場の空気はぴんと張り詰めてるというのに、飛野さんの愉快そうな声だけが浮いて聞こえる。

「やっぱ置いて行って正解だったな」と飛野さんは続けた。


私の正面、何十メートルか離れた場所にいる銀髪の彼は……飛野さんに気づくと、こちらに顔を向けた。


心臓を貫かれるような、鋭すぎる眼差し。



──“鷹”



確かに、そうかもしれないと思った。彼の名にも刻まれるように。


髪が銀色だから、じゃない。

彼そのものを表す色は、黒なのかもしれない。


そしてその目は、鷹そのもの。


今、私が見ているのはジローさんじゃなく──白鷹次郎。


飛野さんの隣にいる私を、彼の鷹の目が捕らえる。


ただ互いに見つめ合うだけ。


ふと、その傍らでちらついた“緑”が気になって視線をずらすと……ジローさんの横には、風切灰次の姿があった。


足元には、一斗缶や朽ちたドラム缶、古びたタイヤや中身のわからない潰れたダンボールが散乱している。

飛野さんが言った通り、相当暴れたらしいことを物語っていた。


鉄材に腰掛け、タバコをふかすハイジ。
私を一瞥したけれど、すぐに視線をコンクリートの床へと落とす。


私を見ても……この格好を見ても、ヤツは何か言葉をかけてくることはなかった。


その表情は、私が蹴り上げたゴールデンボールを心配する必要なんてないと思えるほど、冷め切っていた。


こういうハイジの一面には、何度か遭遇している。


意地悪してくる時は、本当に子供そのもののハイジ。

けれど、ふとした瞬間にギクリとするほど冷たい顔を見せることがある。

寂しそうで、孤独な瞳。


どっちのハイジが本当のハイジなんだろうって、ずっと思ってた。

だけど、“どっちが”じゃない。


“どっちも”風切灰次なんだって、ようやく最近気づいた。


それでも、今のようにいつになく真面目な顔を見せられると、わけもなく不安に駆られる。

私も真剣に向き合わなきゃいけないと、突きつけられているようで。


憎まれ口を叩き合ってるだけじゃ、いられないのだと。