突き抜けるように高い天井。
倉庫全体を、煌々とした照明が照らしている。
内部は思った通り、体育館並みに広い。
数台の大型バイクが並んでいる。
辺りには、オイルとタバコの匂いが充満していた。
床には空き缶や鉄クズ、タバコの吸い殻などが散乱している。
倉庫内には、足が竦んでしまうくらいの大勢の男がいて。
チキンの代表みたいな私は腰を抜かしそうだった。
けれど騒ぐわけでもなく、彼らの表情は一様に緊張に染まっていた。
そんな中──
「おい、まだ見つからねえのかアイツは!!」
一人の男の怒号が、広大な空間に響き渡った。
私は、この声をよく知っている。
求めてやまなかった、声。
誰よりも好きだと思った人の、声。
「おー、今日は一段と派手に暴れ回ったんだな。活きがいいじゃねえか、死人のわりに」
場の空気はぴんと張り詰めてるというのに、飛野さんの愉快そうな声だけが浮いて聞こえる。
「やっぱ置いて行って正解だったな」と飛野さんは続けた。
私の正面、何十メートルか離れた場所にいる銀髪の彼は……飛野さんに気づくと、こちらに顔を向けた。
心臓を貫かれるような、鋭すぎる眼差し。
──“鷹”
確かに、そうかもしれないと思った。彼の名にも刻まれるように。
髪が銀色だから、じゃない。
彼そのものを表す色は、黒なのかもしれない。
そしてその目は、鷹そのもの。
今、私が見ているのはジローさんじゃなく──白鷹次郎。
飛野さんの隣にいる私を、彼の鷹の目が捕らえる。
ただ互いに見つめ合うだけ。
ふと、その傍らでちらついた“緑”が気になって視線をずらすと……ジローさんの横には、風切灰次の姿があった。
足元には、一斗缶や朽ちたドラム缶、古びたタイヤや中身のわからない潰れたダンボールが散乱している。
飛野さんが言った通り、相当暴れたらしいことを物語っていた。
鉄材に腰掛け、タバコをふかすハイジ。
私を一瞥したけれど、すぐに視線をコンクリートの床へと落とす。
私を見ても……この格好を見ても、ヤツは何か言葉をかけてくることはなかった。
その表情は、私が蹴り上げたゴールデンボールを心配する必要なんてないと思えるほど、冷め切っていた。
こういうハイジの一面には、何度か遭遇している。
意地悪してくる時は、本当に子供そのもののハイジ。
けれど、ふとした瞬間にギクリとするほど冷たい顔を見せることがある。
寂しそうで、孤独な瞳。
どっちのハイジが本当のハイジなんだろうって、ずっと思ってた。
だけど、“どっちが”じゃない。
“どっちも”風切灰次なんだって、ようやく最近気づいた。
それでも、今のようにいつになく真面目な顔を見せられると、わけもなく不安に駆られる。
私も真剣に向き合わなきゃいけないと、突きつけられているようで。
憎まれ口を叩き合ってるだけじゃ、いられないのだと。


