……タカ?
あの、空を舞う鷹?
それとも、別の意味?
「ウソ……“黒鷹”は解散したんじゃないの!?」
私の後ろで、朝美が突然大声をあげたもんだから、心臓が止まるかと思った。
「……黒鷹って?」
「えー!?あ、あんた知らないのォ!?」
いや、知らないから聞いてんでしょうよ。
白けた目で見てくる朝美にイラッとしながらも、彼女が話し出したから黙って耳を傾けた。
朝美は実に簡単に、要点だけを教えてくれた。
“黒鷹”
この一帯で、猛威を振るっていたチームの名称。
通称、“鷹”。
街で起こる暴力事件には必ずと言っていいほど“黒鷹”の名がついて回り、危ない噂が絶えなかった。
暴力団との繋がりだとか、ドラッグの売買だとか、女を攫ってるだとか、殺人にまで手を染めてるだとか……とにかく何でもありだったと。
どんな者も介入できず、誰も止めることのできない大規模なチーム。
そこは、行き場をなくした少年たちが居場所を求めて辿り着く場所でもあった。
黒羽大駕
飛野冬也
風切灰次
風切慧次
彼らが、“黒鷹”のメンバーだったことも。
そして──
その“黒鷹”を率いる、“鷹”そのものだった男。
黒鷹の象徴にして、頂点にいた男こそが……白鷹次郎だったのだ、と。
朝美の口調は、淡々としていた。
けれど私には、そのどれもが胸を抉る内容で、とても素直に受け止められなかった。
そんなわけないって。
ジローさんやハイジ、ケイジくん、タイガや飛野さんが、そんな非道なことするわけないって。
否定したい気持ちが、私を惑わせる。
朝美はさらに続ける。
どれだけ悪名を轟かせた黒鷹も、ある日を境に突然姿を消したこと。
吹き荒れていた風は不気味なほどに止み、噂もぴたりと途絶えたこと。
誰も、黒鷹の名を口にしなくなったこと。
口にしなくなったというよりは……目に見えない圧力が働き、その名を口にしてはいけないという暗黙の了解が浸透していったこと。
そして、誰もが「黒鷹は解散した」と水面下で囁くようになったのだと。
ジローさんたちが学校に顔を出すようになったのも、あの大教室で過ごすようになったのも……その頃からだったのだと。
話し終えた朝美は「まだ存在してたなんて……大ニュースだよ!!」と大げさに言いながら、物珍しそうに周囲を見回していた。


