「あんなぁ、それはちょい堪忍したってくれへんか。あからさますぎるやろ」
若干引いてると、背後から“あの人”の関西弁が聞こえてきた。
「見てみぃや、この子ちっちゃくなってしもてるやん。カワイソーに」
後ろに立っていたのは、ケイジくん。
彼は苦笑しながら、心細そうにしている小春の顔を覗き込んでいた。
ヤンキーに、サンドイッチ状態で挟まれている私と小春。
かなりの注目の的だ。
ケイジくんが姿を見せたことで、より一層生徒達のざわめきが膨れ上がる。
それから、大柄な彼らは何やら話をしだして、私達の頭上では言葉が行き交っている。
ちょっとしてから、ヤンキーにーちゃん達は渋々どこかへ散っていった。
「ピーチ姫ちゃん、クリボーは退散したからもう安全やで。小春ちゃんもごめんな、怖がらせて」
いや、クリボーって。
おにーさん達をクリボー扱いしちゃうあたり、さすが彼はマ〇オカラーなだけあって強気だった。
もう、キノコ百個ほどプレゼントしちゃいたいくらいだ。
それにしても、他の生徒が見ている前で平然と話しかけてくるケイジくんの態度に、私はどうすべきなのか戸惑っていた。
だってこの前まで、極力みんなの目に触れる場所では接触を避けてたっていうのに。
彼は何の躊躇いもなく、軽いノリで喋りかけてきた。
それはやっぱり……昨日のあの発言のせいなんだろうか。
“仲間になりたい”宣言の。
どんなに周りの目が厳しくなっていっても、ケイジくんは私達といてくれる。
教室に入れば、ケイジくんと私達が一緒にいる異様な光景に、クラスメイトからは好奇と悪意の眼差しが絶えず送られ続けていた。
だけど、言葉の暴力は耳に入ってこない。
みんな何か言いたそうにしているけれど、言えないんだ。
ケイジくんがいるから。
私への暴言を、彼が届かないようにさせてくれている。
急なケイジくんの変化に、誰もが興味津々で常に何かを囁いている。
休み時間になれば、他のクラスからもそんな様子を見に来る子達が後を絶たなかった。
ある意味、私は見せ物状態だった。
それでもケイジくんは、ずっと私と小春を気にかけてくれていた。
誰にも何も言わせず、守ってくれていた。

