気まぐれヒーロー2




「ひーちゃん、お顔真っ赤だけど熱でもあんの~?」


案の定、飛野さんは耳まで真っ赤にしてタイガにからかわれていた。

年下にいいようにいじられる飛野さんが、不憫でならなかった。


「オメーの短絡思考なんざ、読むまでもねえ。丸わかりだ」


タイガの声がふと、おどけを引っ込めて、柔らかく静かに響いた。


「タレコミがあったんだよ、オメーが翔桜の男と一緒にいるってな。だから向かった。“いつも通り”な」


タイガは視線を、後部座席の私へと移す。

その目は、優しく細められていた。



「つまりだ。オメーが謝ることでも、気にすることでもねえ。こんなのは日常茶飯事なんだよ。俺らの好きなようにやってるだけだ。俺らがそうしたいから、動いた。それだけのことだ」



正直、タイガがそんなこと言ってくれるなんて思わなくて。

目をぱちくりさせる私に、飛野さんが続けた。



「そーいうこった。これは俺らの意思だ。嫌々動くくらいなら、放っといてる」



どうして?

どうして、この人達はこんなにも優しいんだろう。

どうして、私なんかのために……ここまでしてくれるんだろう。


どこまでも、私の“ヒーロー”でいてくれる。


「だからよ~、『ごめんなさい』より『ありがとうステキなタイガ様。一晩私を好きにしてください』の方が俺は嬉しいんだけど?」

「お前な、いい加減にしねーと放り出すぞ!!」


薄暗い車内に、笑い声が響く。

本当に彼らは、どこまでも彼ららしい。


そうだ。タイガが言うように、謝罪よりも感謝の気持ちを持つ方が大事なんだ。

どんなに感謝したって、足りないけれど。

「ありがとう」をいくら言ったって、足りないけれど。


それでも、言い続けようと思う。


幾千、幾万でも「ありがとう」を彼らに伝えようと思う。


だから──



「ありがとう、飛野さん」

「俺は礼もいらねえんだけどなあ」



朗らかに笑う、飛野さん。



「ありがとう、タイガ。一晩私の妄想に付き合ってください」

「全力で断る」



真顔のタイガ。



私も、私らしくいられたらいい。



車は静かに、目的地を目指していた。