「ひーちゃん、お顔真っ赤だけど熱でもあんの~?」
案の定、飛野さんは耳まで真っ赤にしてタイガにからかわれていた。
年下にいいようにいじられる飛野さんが、不憫でならなかった。
「オメーの短絡思考なんざ、読むまでもねえ。丸わかりだ」
タイガの声がふと、おどけを引っ込めて、柔らかく静かに響いた。
「タレコミがあったんだよ、オメーが翔桜の男と一緒にいるってな。だから向かった。“いつも通り”な」
タイガは視線を、後部座席の私へと移す。
その目は、優しく細められていた。
「つまりだ。オメーが謝ることでも、気にすることでもねえ。こんなのは日常茶飯事なんだよ。俺らの好きなようにやってるだけだ。俺らがそうしたいから、動いた。それだけのことだ」
正直、タイガがそんなこと言ってくれるなんて思わなくて。
目をぱちくりさせる私に、飛野さんが続けた。
「そーいうこった。これは俺らの意思だ。嫌々動くくらいなら、放っといてる」
どうして?
どうして、この人達はこんなにも優しいんだろう。
どうして、私なんかのために……ここまでしてくれるんだろう。
どこまでも、私の“ヒーロー”でいてくれる。
「だからよ~、『ごめんなさい』より『ありがとうステキなタイガ様。一晩私を好きにしてください』の方が俺は嬉しいんだけど?」
「お前な、いい加減にしねーと放り出すぞ!!」
薄暗い車内に、笑い声が響く。
本当に彼らは、どこまでも彼ららしい。
そうだ。タイガが言うように、謝罪よりも感謝の気持ちを持つ方が大事なんだ。
どんなに感謝したって、足りないけれど。
「ありがとう」をいくら言ったって、足りないけれど。
それでも、言い続けようと思う。
幾千、幾万でも「ありがとう」を彼らに伝えようと思う。
だから──
「ありがとう、飛野さん」
「俺は礼もいらねえんだけどなあ」
朗らかに笑う、飛野さん。
「ありがとう、タイガ。一晩私の妄想に付き合ってください」
「全力で断る」
真顔のタイガ。
私も、私らしくいられたらいい。
車は静かに、目的地を目指していた。


