気まぐれヒーロー2




「じゃ、行こうか」

「え?あの、どこに?」

「なんだ、黒羽。言ってねーのか」



飛野さんの意外そうな声に、私はきょとんとする。

私たちが行き先を知っていて当然──そんな口ぶりだったから、助手席のタイガに視線を送った。



「タイガ、どこ……行くの?」



不安げに揺れる私の声に、タイガはスマホをいじりながらあっさり答える。



「決まってんだろ。帰んだよ、オメーの愛しのご主人様のとこによ」



ご主人様って……ジローさんのこと……?


“ねえねえご主人様って~?もしかしてあんた、アブナイ世界に足突っ込んでんじゃないでしょうね!?っていうかさぁ、黒羽先輩とどういう関係!?この車何なの!?ケイジくんともアサミの知らないうちに仲良くなってるしさぁ、何があったのぉ!?ハイジくんともそうなの!?ひょっとして、白鷹先輩とも!!?”


コソコソ話してるつもりなんだろうけれど、全然抑えきれてない朝美の大興奮な声よりも、何よりも。

一気に聞きすぎでしょうよ、とかいうツッコミよりも。

最初の質問忘れちゃったよ、とか考えるよりも。


向かう先が、ジローさんのところだということの方が私には重大で。


「何しに……」


ほとんど独り言のような呟きでも、タイガは拾ってくれた。


「『何しに』?理由がいんのか?アイツんとこにお前が行くのに、“理由”が」


まるで当然だろと言わんばかりのタイガの言葉に『そっか~別に飼い犬が飼い主のもとに帰るのに、理由なんていらないか~』なんて、危うく丸め込まれそうになった。


違うじゃん!!いいわけないじゃん!!

だって……もう、私とジローさんは関係ないのに。

私とジローさんの間には、何もないのに。


タイガは、知らない?
ジローさんから何も聞いてないの?


飛野さんも……?



「で、翔桜のヤツらは三那に任せてあるのか?」

「ああ」

「アイツ、ムチャしてねえだろうな」

「さあな。釘は刺しといたけどよ、ミッチーのことだ。アイツの“加減”は俺らにしちゃギリギリだからな」

「……シンマとの関係は?」

「ひーちゃ~ん、それをこれから吐かせんだろ~?」



飛野さんとタイガのやり取りを、私はただ黙って聞いていた。