だけど、ハラハラしながら見守っている私のことなんか露知らず、ハレルヤさんは男の顔を掴んだまま豪快に腕を振るい──
凄まじい音と共に、男をガラステーブルに叩きつけた。
思わず、口に手をあてる。
そうしないと悲鳴が漏れてしまいそうだったから。
テーブルの上にあったジュースの入ったコップは全て倒れ、中身が床に零れ、絨毯に染みが広がっていく。
ぐったりと床に倒れ込んで動かない、翔桜の男。
気を失ってるだけ……だよね。
殺したわけじゃないよね!?
そうヒヤヒヤしてしまうくらいに、今の一撃は激しすぎた。
大柄なハレルヤさんだからこそ成し得る技だと思う。
そして男を見下ろすその目は、つまらないものでも見るかのようだった。
残る三人の男はすっかり縮こまり、歯向かう気配なんて少しもない。
それどころか、ハレルヤさんに視線を流されただけで壁際にへばりついてしまうほど、怯えきっていた。
一歩、ハレルヤさんが彼らに足を向けた瞬間──
「お、俺は関係ねえんだ!誘われただけなんだよ、見逃してくれ!!」
己の身を守るため、勝手な言い訳を並べ立てるしかないほどに、彼らは精神的に追い詰められていた。
その時、一人が恐怖に負けて逃げ出し、ハレルヤさんの横を通り抜けようとした。
「どこへ行く」
青い目の彼が許すはずもなく、男の襟をがしっと掴んで止めた。
捕まった男は腰を抜かしそうな勢いで、顔面蒼白になっている。
ハレルヤさんにいたっては、その眼光だけで人を殺せそうだと思った。
こうなってしまえば、もう平等なんかじゃない。
対等な立場ですらなく、一方的な暴力だ。
「ハメたのが他のヤロウだったとしてもだ。てめえらがやったことには変わりねえ。これぐらいのリスクは当然だと、わかってたことだろうが」
タイガまでもが、聞いたこともないような低い声で男達を脅かす。
滲み出る気迫に、ジローさんと同じ“王者の風格”を感じた。
「覚悟はできてんだろ?今さら、知らなかったじゃ済まねえんだよ!!」
猛獣が吠えるかの如く凄む声音に、私まで恐怖が伝染する。
チャラけてもなければ、遊び人の顔でもない。
黒羽大駕の本性。虎の目をした男。
金色の獅子と虎に挟まれたタヌキの私には、どうすることもできなくて小さくなるばかりだった。
味方のはずなのに、不安ばかりが大きくなっていく。
怖い──そう思ってしまう。


