「まだだ、まだアイツに知らせるには“早ェ”。もう少し後の方がいい」
ハレルヤさんに対し、タイガがそう答える。
そこでまたも出てくる、“彼”の名前。
きっと未だ素直に安心できないのは……『なぜ』が解消されないから。
今この状況における、ありとあらゆるものが謎だから。
ジローさんと私の間には、もう何もないと思っていたのに……。
先程“ユウくん”が血相を変えて叫んだ言葉が、どうにも胸をざわめかせる。
“ソイツ、白鷹の女です……白鷹次郎の!”
『女』って、何?
ジローさんの『女』は、あの美人な彼女でしょ?
まだ『白鷹のペットです』って言うなら、わかる。
……いや、わかりたくないけども。めちゃくちゃ変だけども。
それにタイガとハレルヤさんが来たのも、私が翔桜の男達に乱暴されようとしているのを“知っていた”かのようだった。
じゃなきゃ来るはずはないし、ここに私達がいることも把握していたみたいだった。
考えれば考えるほど、こんがらがる一方だった。
「黒羽に、三那……!?マジかよ……!!じゃあこの女、本当に白鷹の……」
翔桜の男達も金髪二人組の存在をやっと受け入れたのか、動揺し始めた。
その声は完全に引け腰で……顔を見せただけで、こんな風に男達を黙らせてしまう彼らを、改めて“別次元の人達”なんだと認識させられる。
「とりあえず、黙ってろ」
動いたのは、ハレルヤさん。
ぶっきらぼうに一言吐き捨て、鋭い眼光はそのままに、足を踏み出した。
「殺すなよ、ミッチー」
その後を追うタイガの声には笑いが含まれていて、物騒な単語には似つかわしくなかった。
「お前が俺をそう呼ぶのをやめたらな」
ハレルヤさんも実にクールに返す。
「ま、待ってくれ!知らなかったんだ、まさかその女が白鷹の女だったなんてよ……!!知ってたら手ェ出さなかっ──」
「黙れっつったのが聞こえなかったのか」
私の倍はありそうな大きな手で、ハレルヤさんは必死に助けを請う男の顔面を容赦なく鷲掴みにする。力ずくで、男の言葉を封じた。
同じ男だっていうのに、その体格差は歴然で、まるで勝負にならない。
何だかハレルヤさんって……ターミネーターみたい。
うん。彼を表すなら、それが一番しっくりくる気がする。
ひたすらクール。無駄なお喋りはしない。それに笑わない。
ハーフなだけあって、日本人離れしたガタイ。
一体、どんな人なんだろう。
味方には、違いないよね……?


