気まぐれヒーロー2




「ここをラブホかなんかと勘違いしてんじゃねーか?ま、ラブホにもカラオケはあるけどよ」


タイガの声色はいつもと変わらず軽い。
どうでもいい情報まで、わざわざご丁寧に教えてくれた。

そして入り口付近のスイッチが押されたのか、冷たい空気の漂う部屋に、ぱっと暖かな明かりが灯った。


闇に慣れていた目にはその光が強すぎて、思わずぎゅっと瞼を閉じる。
しばらくしてからそっと目を開けば、視界は鮮明になり──男たちは私から離れ、部屋の隅に退いていた。

そして、「えーうそォ、信じらんない!!黒羽先輩!!?なんでぇ!?」と場違いな黄色い声をあげる朝美に辟易しつつ。

私も金髪二人組を、恐る恐る見上げた。


タイガと目が合った、と思ったら。


「俺を誘惑してんのか?いつそんな芸当仕込まれたんだ、タマちゃん」

「ぶっ」


上から降ってきたのは、タイガが脱ぎ捨てた制服の上着。

ばさっと顔にかかり、視界が再び黒に覆い尽くされた。


「すまねえな、年下には興味ねえ。けどどうしてもってんなら、一発だけなら相手してやんねえことも──」
「バカ!!エロバカ!!」


見境いなしのタイガのエロトークを防ぐために、慌てて顔を出した。

睨みつけてやろうと思ったのに。

そこにいたのは、しゃがんで私と目線を合わせるタイガだった。

ニヤニヤしてるかと思いきや、妙に落ち着いた表情で。


「その様子じゃ、心配いらなそうだな」


優しい声と眼差しで、私の頭をくしゃっと撫でる。

私の心の中なんて全て読み取られているかのようなタイガの瞳に、言葉を飲み込んだ。

黙って、タイガの制服を羽織った。


こうやって普段と同じように、私をからかうのも……私に気を遣わさないようにしてくれてる。

ボタンが千切られたカッターシャツのせいで前が全開な私のために、上着を貸してくれたことも。

だから、タイガがそうしてくれるなら、何も言わずにその優しさを受け取ろうと思った。


まだ温もりの残る制服に包まれ、張り詰めていた緊張が少し和らいでいく。


「ジローに連絡しろ」


頭上から降ってきたのは、冷たく無感情な声。

背筋をゾクゾクさせるほど低いその声は、確認するまでもなくハレルヤさんのものだ。


逆立つブロンドの髪は、まるでライオンの(たてがみ)のよう。

深い青の瞳は、翔桜の男達を静かに見据えていた。

狙いを定めた獲物を、今から狩ろうとしているかのような眼差しだった。


恐ろしいほど身長が高く、がっしりとした体つき。
そこに立っているだけで、ひしひしと圧迫感が伝わってくる。

ジローさんの家で初めて会った時は酷い怪我を負っていて、今も薄い傷跡が残っている。

けれど、その傷跡すら似合ってしまうほど精悍な顔立ちと佇まいに、私はただ圧倒されていた。