『自分のためじゃなくて、他の人のために戦えるってすごいことだよ』
そう、なのかな。
確かに自分のことを言われたわけじゃないけれど、でもやっぱり自分のためなんだと思う。
自分が、“彼ら”やお兄ちゃんを傷つけるような言葉を、聞きたくなかっただけなんだ。
『ももちゃん、頑張ったね。これからは一人じゃないって、思ってね。私も一緒だから』
そう言って小春が微笑んでくれるから。
それだけで、私は前に進める。歩き出せる。
自分もあんなに恐ろしい目にあって、私といれば巻き添えくらうかもしれないのに……
小春は私のそばにいることを、選んでくれた。
そして彼女は、“彼ら”のことも信じてくれた。
頻繁に生徒から、“近寄るな”“関わるな”と口々に噂される、彼らのことも。
『だってね、いい人だって思ったの。助けてくれたもん、ももちゃんも私のことも。それは本当のことだから』
ちょっぴり恥ずかしそうにする小春は、『少しだけ、まだ怖いって気持ちはあるんだけど……』と口ごもりながらも、笑っていた。
小春がそんな風に彼らを見てくれることが、嬉しかった。
そして、そんな彼らと関係している私にも、変わらない眼差しを向けてくれるのが何よりも救いだった。
小春と他愛ない会話をしながら、私は昨日のことを振り返っていた。
やっぱり周囲からは、厳しい視線が付きまとってくる。
でも、もう昨日までとは違うから。
私を理解してくれる人が、いる。
だから堂々と、廊下を歩けばいい。
と、思っていたら。
「おっす!ももちゃん」
「お前なに馴れ馴れしくしてんだよ、姐さんになんて口聞いてんだボケ!!」
「そうだぞお前、抜け駆けしてんじゃねえ」
「ばーか、お前らみてえな野蛮なサルは相手にされねえよ。なあももちゃん」
「だから姐さんって呼べっつってんだろクソが!!」
どこから湧いてきたのか、白鷹ファミリーのおにーさん達が絡んできた。
小春は私の後ろに回り込み、ぎゅうっと腕にしがみついていた。
突然いかついにーちゃん達に囲まれ、怯えている小春をよそに私はハテナだらけで。
こんな一年生の教室前で、白鷹ファミリーのヤンキーにーちゃん達が現れるなんて思わないじゃないの。
しかも、みんないるのに。
他の生徒達が見てるっていうのに……!!
なぜだ……!!

