気まぐれヒーロー2




「大人しくしてろよ?お利口にしてたら、すぐ終わるからよ」


その言葉の意味も……嫌でも勘づいていた。


ただ怖くて仕方なくて。
何をされるのか想像しただけで、震えが止まらなくて……為す術がなかった。


誰かがスピーカーの音量を上げたのか、室内は鼓膜をビリビリ震わすような騒音で、混乱に陥った。


叫んでも、喚いても、音楽に掻き消される。

助けを求める声は──誰にも届かない。


私に馬乗りになっている男とは別の男に、両手を頭上で押さえつけられ、口を塞がれた。


「お前ら、外で見張ってろ」

「は、はい」


命令されたユウくんとヒロくんは、私達に目もくれず部屋から去っていってしまった。


二人もまた、恐怖に縛られた目をしていた。

たぶんこの男達は二人の先輩で、上下関係は明らかに上なんだろう。

逆らえないんだ……コイツらに。


薄闇のなか、私を見下ろすのは汚れた欲望に染まった、卑しい目。


耳をつんざく騒音に混じって響くのは──私を絶望へ突き落とす、男達の卑劣な笑い声だけだった。


何がどうなって、今に至るのか。

一体、何が起こってるのか。

状況を整理する間もなく降りかかった悪夢に、私の力なんてちっぽけすぎた。



──男に襲われている。



はっきりしているのは、ただ、それだけ。



“俺らみてえなのばっかじゃねえ、平気で女を襲うヤツなんざ世の中腐るほどいんだよ。もっと男に警戒心持て”



ねえ、ハイジ。

ハイジの言った通りだったよ。


私なんかをそういう対象に見る人なんて、いないって思ってたんだ。

そんな物好きはいないって、“まさか自分が”、って。
どこか他人事だと捉えていた。


でも本当は可能性なんて、いくらでもあり得るのに。

きっかけなんて、そこら中に転がってるっていうのに。


ニュースで報道されるような“犯罪”に自分が巻き込まれるなんて、思いもしなかった。

そんなのは画面の向こうの話だと、聞き流していた。


だって、ユウくんとヒロくんは朝美の知り合いらしかったから。どこかで油断してたんだ。

危なそうには、見えなかった。

でも私には男の子を見る目なんてなくて、見抜けなかった。


それに……ジローさん達がそうだったように、二人もそうなんじゃないかって思ってしまった。


外見だけじゃない。

ちゃんと話して、その人の言葉を聞いて、その人の目を見ないと……その人自身はわからない。

最初から決めつけるのは、よそうって。


なのに……やっぱり、“そう”だったの?

私の考えが甘かったの?


仕組んだのは、『二人』の方だった?

それとも……この男達?


ハイジは忠告してくれた。

それなのに、こんな事態になってしまったのは私の不注意。


ファーストフード店で会った時、翔桜の男子だとわかった時点で、朝美を連れて帰ればよかった。


たらればばかりが、頭をよぎった。