「私……“タマ”だもん……」
「……は?」
“可愛いな、お前”
“お前に嫌な思いさせたくねえ。お前に嫌われんのは、キツい”
他の人の前では無口なのに、私にはいっぱい話してくれるジローさん。
“俺はお前と散歩にも行きてえし、『おて』もしてくれねえとイヤだ。頭も撫でてえし、首輪も着けてるとこ見てえ”
照れながらも、精一杯思いを伝えてくれたジローさん。
“まさかオトモダチがウサギとはな”
小春を、ウサギだと思い込んでるジローさん。
すぐ鼻血出しちゃうジローさん。
“うぷっ”
限界超えると、吐いちゃうらしいジローさん。
“俺の、永遠の憧れ”
響兄ちゃんを……そう言ってくれた、ジローさん。
私が大好きな響兄ちゃんを、同じように好きになってくれた。
“タマ、来いよ”
微かにだけど、笑ってくれたジローさん。
大きい手で、頭をなでなでしてくれた。
「私はタマなんだもん……!!」
ちょっとだけ、考えたりもした。
他の人を好きになれば。
朝美の言うように、新しい恋をすれば。
ジローさんのこと、諦められるのかなって。
忘れられるかもしれないって。
でも、そうじゃなかったんだ。
逆だった。
別の男の子といればいるほど、想うのはジローさんのことだけだった。
薄れるどころか、どんどん気持ちは痛みを伴って濃くなるだけだった。
他の誰より好きなんだと、より強く……心に刻み込まれるだけだった。
私、もう取り返しのつかないところまで来てる。
ジローさんじゃなきゃ、ダメだ。
傍にいたいのも、全部知りたいと思うのも。
触れられたいと思うのも。
何をするにも──
ジローさんがいい。
ジローさんじゃなきゃ、イヤ。
ジローさんだけなの。
私も、“タマ”がいい。
知らない人に“もも”って、呼び捨てにされるくらいなら。
ジローさんが呼ぶ、“タマ”でいい。
ジローさんが私を柔らかく呼んでくれる、“タマ”が恋しい。


