気まぐれヒーロー2



心配そうに歩み寄ってくる彼に、思わず身構えてしまう。

どうして?
その疑問が、咄嗟に口をつきそうになった。

どうにか飲み込んだけれど。


「あ、うん……心配ないから」


それだけを返すのが精一杯で、それ以上は話す気になれなかった。

私に構ってほしくなかった。


「よかったぁ、安心した」


……何しに来たんだろう。

わざわざ、私を追いかけてきたの?

こういうのに慣れてなくて、彼が何を考えているのか全然見えない。

怪しむような視線を向け続ける私に、ユウくんは気まずそうにしながら、次の言葉を探しているようだった。


私と彼の間に流れる時間は、落ち着かないもので。

周りの部屋から漏れてくる軽快な音楽だけが、私達を取り巻いていた。


できることなら、今すぐこの場を離れたい。
彼と一緒にいたくない。


今からこの人が言おうとしてることが、私の心を惑わせるのを、気づいたからかもしれなかった。

それも、聞かずに済むならそうしたいくらいの内容なんじゃないかって、彼の目を見て思った。


あれこれと探っていると、黙っていたユウくんがやっと……口を開いた。



「もも、あのさ……俺と付き合わない?」



──なに言ってるんだろう、この人。



「今ちょうどフリーだし。いいじゃん、“もも”も彼氏いないんだろ?俺、もものこと気に入っちゃって」



ナニヲ、イッテルノ?


怒りとか悲しみとか、哀れみとか……何一つ、今の私を彩る感情はなかった。

何も感じなかったと言った方が、正しいかもしれない。

私は言葉を失って、ただ彼を見ていた。


……見ていた?

ううん。
見てるのに、“見えない”。


「な?“もも”」


目の前の彼が一歩踏み出すのも、スローモーションみたいに映る。

彼の口元にのせた笑みが、私の目をもっと暗くしていく。


まるで、もう自分のものになったかのような勝ち誇った顔が……ますます彼を遠ざけた。


だとしても。
心は離れていっても、この人は私に近づいてくる。


付き合うって……お互いの思いが通じ合って、そうなるものじゃないの?

好きだから、寄り添いたいと思うものじゃないの?


“好き”なら、相手をもっともっと知りたいと思うのが当然でしょう?