心配そうに歩み寄ってくる彼に、思わず身構えてしまう。
どうして?
その疑問が、咄嗟に口をつきそうになった。
どうにか飲み込んだけれど。
「あ、うん……心配ないから」
それだけを返すのが精一杯で、それ以上は話す気になれなかった。
私に構ってほしくなかった。
「よかったぁ、安心した」
……何しに来たんだろう。
わざわざ、私を追いかけてきたの?
こういうのに慣れてなくて、彼が何を考えているのか全然見えない。
怪しむような視線を向け続ける私に、ユウくんは気まずそうにしながら、次の言葉を探しているようだった。
私と彼の間に流れる時間は、落ち着かないもので。
周りの部屋から漏れてくる軽快な音楽だけが、私達を取り巻いていた。
できることなら、今すぐこの場を離れたい。
彼と一緒にいたくない。
今からこの人が言おうとしてることが、私の心を惑わせるのを、気づいたからかもしれなかった。
それも、聞かずに済むならそうしたいくらいの内容なんじゃないかって、彼の目を見て思った。
あれこれと探っていると、黙っていたユウくんがやっと……口を開いた。
「もも、あのさ……俺と付き合わない?」
──なに言ってるんだろう、この人。
「今ちょうどフリーだし。いいじゃん、“もも”も彼氏いないんだろ?俺、もものこと気に入っちゃって」
ナニヲ、イッテルノ?
怒りとか悲しみとか、哀れみとか……何一つ、今の私を彩る感情はなかった。
何も感じなかったと言った方が、正しいかもしれない。
私は言葉を失って、ただ彼を見ていた。
……見ていた?
ううん。
見てるのに、“見えない”。
「な?“もも”」
目の前の彼が一歩踏み出すのも、スローモーションみたいに映る。
彼の口元にのせた笑みが、私の目をもっと暗くしていく。
まるで、もう自分のものになったかのような勝ち誇った顔が……ますます彼を遠ざけた。
だとしても。
心は離れていっても、この人は私に近づいてくる。
付き合うって……お互いの思いが通じ合って、そうなるものじゃないの?
好きだから、寄り添いたいと思うものじゃないの?
“好き”なら、相手をもっともっと知りたいと思うのが当然でしょう?


