気まぐれヒーロー2




「でさぁ、俺のツレがこないだバイト先でヘマやったらしくてさ──」

「……うん」


スピーカーから流れる流行りの曲。大音量の低音が腹の底に響く、照明の少し暗い室内。

朝美は黒髪の“ヒロくん”と身を寄せ合い、二人で歌う曲を選んでいた。


私の横には、茶髪の“ユウくん”。

さっきから笑顔で話しかけてくれるけど……正直、もう疲れていた。


この人……自分のことばっかり。
自分の話しかしてない。


会話のキャッチボールなんて成立していなくて、私はただ相づちを打つばかりだった。


私を知ろうとなんて、していない。

そしてそれは、私も同じだった。彼に対して、何の興味も湧かなかった。


空っぽの笑顔。空っぽの、心。


自分では笑ってるつもりでも、きっと目は、笑っていない。

ユウくんはそんなことにも、気づいていないだろう。


私は……どこにいるの?

私の心は、どこにあるの?



朝美の高い声が。
ユウくんとヒロくんの、笑い声が。


部屋中にガンガン響く音楽が──


頭の中で暴れまわる。
ぐわんぐわんして……酔いそう。


「ももぉ、歌わないのぉ?」

「ん、……ごめん。ちょっと気分悪いから、トイレ行ってくる」

「え~、ダイジョーブ?」

「うん、大丈夫」


無理やり笑顔を作ってみせ、私は部屋を出た。


「私……何やってんの……?」


誰もいないトイレ。

喧しい音から逃れられて、少し気分は楽になった。

一人になれて安心してる。

鏡の前に立って、“私らしくない”私と見つめ合いながら、か細く呟いた。


外見だけじゃない。
本当は笑いたくなんかないのに、彼らの前で笑ってる私も……嫌いだった。

無理して周囲に合わせてる自分が、大嫌いだった。


こんな時に思い浮かべるのは、あのカラフルなヤンキーレンジャー達で。

“彼ら”だって、似たようなものなのに……でも他の人と接してみて初めてわかったんだ。


“彼ら”がどれだけ、私を思いやってくれていたかってこと。

本当は……すごく優しかったってこと。


私が居心地悪くないように、無理しないで済むように。
いつだって、そういう空気を作ってくれていた。


自然と、私が私らしくいられるように──。


不意に、“みんな”が懐かしくなって。
帰りたくなった。


もう時間も遅いし、お母さんも心配するだろうし……帰ろう。


そう決めて、トイレを出たら



「“もも”、大丈夫?気分マシになった?」



外で、ユウくんが待っていた。