仮に私からアイツに電話をするとして。
今、取り込み中だったらどうしようとか……ハイジを気にかける自分を、認めたくない。


なんでかな。

私、なんでハイジ相手だとこういう風になっちゃうんだろう。



“お前がジローちゃんの女嫌いを治すんだよ”



ハイジ、あれは……何だったの?

あの夜、コンビニでジローさんは綺麗な女の人と一緒にいた。

普通に言葉を交わして、彼女に触れていた。


わけがわかんなくてハイジへの不信感が募るばかりで、それが余計にヤツからの連絡を拒否するのに拍車をかけた。

だから、電話も出ない。LIMEもしない。

ハイジと話したくなんかないし、アイツの顔も見たくなかった。

仲間になりたいと願いながら、そう簡単に気持ちの切り替えができるわけもなくて……不安は拭えなかった。



学校へ向かう道のり、結局イヤなのに私はハイジのことばかり考えていた。

昇降口で靴を履き替えていると、肩を叩かれて、振り返れば小春がいた。


「おはよう」って、挨拶をする。

それは当然のやり取りなんだけど、何だかすごく安心してる自分がいた。


小春に昨日、真実を打ち明けた。

私がずっと自分の中に溜め込んでいたものを、彼女には話そうと思ったから。


田川のこと。アイツに何を言われたのか。

私と、ハイジ達とのこと。


全部、小春に伝えた。
言いたくなったんだ。

お互いの気持ちを確かめ合って、互いに無理していたことを知ったから。


小春に頼りたいって、思った。

小春なら大丈夫だって。


私が話し終わると、小春は動じることなく、受け止めてくれた。


『ももちゃん……辛かったね。気づいてあげられなくて、ごめんね……。でも、』


彼女は小さな手を、私の手にそっと添えた。


『強いよ、ももちゃんは。本当に強いと思う』


そんなことないのにって思ったけど、小春の澄んだ瞳に、ただ黙っていた。