ハイジたちも、そうだったけど……でも、“彼ら”とこの二人では根本的に違う。
“彼ら”は、境界線をちゃんと見極めてる。
踏み込んでいい“ライン”を頭に入れたうえで、言葉を選んで私に接してくる。
だから本気で嫌悪感を抱く一歩手前で、必ず歯止めをきかせる。
けど……この人達は、そうじゃない。
私が嫌な思いしてることにも、きっと気づいてない。
その場が盛り上がれば、それでいいんだろう。
「ももちゃん、ジョーダンだからさぁ、そう落ち込まないでよ。ね?楽しくいこーよ」
茶髪の“ユウくん”が俯きがちな私の顔を覗き込みながら謝ってきたけど、その声色からは悪びれた様子なんて、少しも感じられなかった。
……私が、変なのかな。
普通の子なら、こんなこと思わないのかな。
深く考えずに、ノリ良く明るく振る舞うものなのかな……。
今、この場じゃ……私の方が空気読めない女だ。
「ここにいたってしょーがないしさぁ、カラオケいこーよ」
「お、いいじゃん!そうしよーぜ」
朝美の提案で、とんとん拍子にカラオケに行くことになった。
私達はファーストフード店を出て、少し離れた場所にあるカラオケ店へ向かう。
断ろうにも、この流れじゃ断れない。
私は憂鬱な気分のまま、仕方なくついていくしかなかった。
“ねえ!これ、どういうことなのよ!!”
“なあに?怒ってんの~?二人ともレベル高いのに、不満なわけ~?”
“そういうことを言ってんじゃないの!!あんた、何の目的で私を彼らに会わせたのよ”
“だってね、ももは辛い恋してるわけじゃん?だからぁ、新しい出会いが必要だと思ったのぉ。今の田川くんへの気持ちは忘れて、二人のどっちかにしときなよぉ”
“はあああ!?”
道中、先を歩く男の子達に聞こえないよう声を潜めて、朝美をとっちめた。
返ってきたのは勘違いも甚だしい答えで、一瞬、我が耳を疑った。
うんざりもしたし、呆れもしたけど。
これが朝美なりの、“優しさ”なんだろうか。
本気で朝美は、私が田川を本城咲妃から略奪しようとしてると、思い込んでいるみたいだった。
だとしても、彼女を責めるつもりもなかった。
私は、朝美には何も話してないから。
真実を告げる必要なんてないと、思っていた。
言っても仕方ない──そう自分で、決めつけていた。
朝美にはきっと悪気がないし、言っても言わなくても同じなんじゃないかって。
信じて欲しいとか、欲しくないとか、そういう話じゃなくて……。
つまり、私と朝美の“距離”はこれくらいなのだ。
変に深入りしない。だからといって、突き放すわけでもない。
朝美は私の世界に、入ってこようとはしない。
だから、私も朝美の世界に入ろうとは思わない。
そのくらいが、私には心地よかった。


