「うわあああ!!あ、朝美!!妖怪がこっち見てるよおお!!怖いよおお!!」
「それ、あんたよ」
「……」
確かに私は大変身していた。
小悪魔どころじゃない、本物の悪魔に。
目の周りはぐるりと黒いラインで囲まれて、まぶたはギラギラ。
睫毛だってバサバサで、ほっぺたは火照ったみたいに赤く色づいてる。唇もテカテカ。
これ、誰……?
私、なの?ここに映ってるの……。
まるで別人みたいで、戸惑ったまましばらく鏡を見つめていた。
朝美のメイクは私からしたら、かなり濃いめ。
それは彼女自身の顔を見れば、わかる。
同じように仕上がってるんだもん。
朝美2号だ。
こうやって、みんな“仮面”を被ってるの?
素顔を隠して、色を塗り足して。
“外の自分”を作っていくの?
それが“女”になるってこと?
そうしなきゃ……認めてもらえないの……?
憧れは、あった。
街で見かける大人のお姉さん達は、私には別世界の人のようで。
透明感があって、とっても綺麗で。
私があんな風になれるとは思ってないけれど、それでも夢を抱いてた。
お化粧すれば、私もちょっとは近づけるのかなって。
でも、鏡の中の私は……何なんだろう。
私が、私じゃない。
劇的に変化はしたかもしれない。
だけど、“私らしくない”って思ったんだ。
高ぶっていた気持ちも一気に冷めて、朝美に髪を巻かれているのもどうでもよくて、彼女のお人形さんになっていた。
「ん~、ももさぁ、スカートも長すぎぃ。立ってみて~」
言われるまま立ち上がると、ウエストのところを二回ほど折られて、スカート丈が十センチも短くなってしまった。
「あんたね、なんでここまでしないといけないのよ!?」
「え~、だってさぁ」
やたら太股あたりがスースーして、気持ち悪い。
ここまでされる理由を未だに教えてもらえず、たまりかねて問いつめてやろうとした時だった。
「ねー、北遥のコだよね?アサミちゃんって、もしかして君?」
騒がしい店内。
人の話し声や音楽に埋め尽くされているのに、その声だけがやけにはっきり耳に届いた。
私達に向けられた、男の声。
朝美につられて視線を向けると、テーブルの前に二人の男の子が立っていた。
「そおでーす!アサミを知ってるってことはぁ……ユウくんだったりする!?」
「あたりー。ユウくんでーす。んで、こっちはヒロ」
「よろしくー」
「ヒロくんかぁ、よろしくね~」
私を置いてけぼりにして、朝美と二人組は楽しそうに話し始めた。
全くついていけない。
自分の置かれている立場が理解できない。
表情が固まったまま、私は彼らを見上げていた。


