気まぐれヒーロー2




「うわあああ!!あ、朝美!!妖怪がこっち見てるよおお!!怖いよおお!!」

「それ、あんたよ」

「……」



確かに私は大変身していた。

小悪魔どころじゃない、本物の悪魔に。


目の周りはぐるりと黒いラインで囲まれて、まぶたはギラギラ。

睫毛だってバサバサで、ほっぺたは火照ったみたいに赤く色づいてる。唇もテカテカ。


これ、誰……?

私、なの?ここに映ってるの……。


まるで別人みたいで、戸惑ったまましばらく鏡を見つめていた。

朝美のメイクは私からしたら、かなり濃いめ。

それは彼女自身の顔を見れば、わかる。
同じように仕上がってるんだもん。

朝美2号だ。


こうやって、みんな“仮面”を被ってるの?

素顔を隠して、色を塗り足して。

“外の自分”を作っていくの?

それが“女”になるってこと?


そうしなきゃ……認めてもらえないの……?


憧れは、あった。

街で見かける大人のお姉さん達は、私には別世界の人のようで。
透明感があって、とっても綺麗で。


私があんな風になれるとは思ってないけれど、それでも夢を抱いてた。

お化粧すれば、私もちょっとは近づけるのかなって。

でも、鏡の中の私は……何なんだろう。


私が、私じゃない。

劇的に変化はしたかもしれない。


だけど、“私らしくない”って思ったんだ。

高ぶっていた気持ちも一気に冷めて、朝美に髪を巻かれているのもどうでもよくて、彼女のお人形さんになっていた。


「ん~、ももさぁ、スカートも長すぎぃ。立ってみて~」


言われるまま立ち上がると、ウエストのところを二回ほど折られて、スカート丈が十センチも短くなってしまった。


「あんたね、なんでここまでしないといけないのよ!?」

「え~、だってさぁ」


やたら太股あたりがスースーして、気持ち悪い。
ここまでされる理由を未だに教えてもらえず、たまりかねて問いつめてやろうとした時だった。


「ねー、北遥のコだよね?アサミちゃんって、もしかして君?」


騒がしい店内。
人の話し声や音楽に埋め尽くされているのに、その声だけがやけにはっきり耳に届いた。


私達に向けられた、男の声。


朝美につられて視線を向けると、テーブルの前に二人の男の子が立っていた。


「そおでーす!アサミを知ってるってことはぁ……ユウくんだったりする!?」

「あたりー。ユウくんでーす。んで、こっちはヒロ」

「よろしくー」

「ヒロくんかぁ、よろしくね~」


私を置いてけぼりにして、朝美と二人組は楽しそうに話し始めた。

全くついていけない。
自分の置かれている立場が理解できない。

表情が固まったまま、私は彼らを見上げていた。