そして、お化粧してる子達が可愛いのも当然だと思った。
それだけ努力してるんだ。
お金かけて、お化粧のやり方を勉強して。
ちょっとでも自分を可愛く見せるために、頑張ってるんだもん。
そりゃ輝いて見えるよね。
……“あの人”もそうだ。
ジローさんの、彼女。
メイクは濃くなかったけど、綺麗だった。
もともと美人だけど、睫毛とかすっごい長くて、くるんってカールしてて。
唇だってツヤツヤで潤ってて。
爪も丁寧に、マニキュアが塗られてた。
頭のてっぺんから足の先まで手を抜かない、完璧な女の人。
努力を怠らないから、ああやって美しくいられるんだ。
だから、ジローさんもあの人を……。
……私は?
私は、何か努力してる?
自分を磨くこと、何にもしてないじゃん。
好きになってもらいたいなら、それなりの行動を起こさないといけないのに。
私は……私の、ままだ。
私なんかがお化粧したって……って、最初っから諦めてたけど、やっぱり必要なことなのかな。
外見を変えるって、大事なことなのかな。
私も“あの人”みたいに、ちょっとでもレベルアップできたら……ジローさん、私のこと見てくれるかな。
彼女なんて高望みしないから。
ペットとしてでも……相手にしてくれるのかな……。
「でーきたっ☆ふふふ~ももぉ、すっごいイイ感じだよぉ?アサミってば、メイクの才能あるかも~」
顔をあれこれいじられること十分ほど。
朝美は満足げに私を眺め、ニコニコしている。
──私の顔、一体どうなってるんだろう。
すっごく気になる。
初めてのお化粧に、内心ちょっぴり期待してる自分がいて。
早く見たくて、ドキドキして落ち着かない。
けどそんな自分を知られたくなくて、あくまで冷静を装って朝美に声をかけた。
「ねえ、鏡見せてよ」
「いいよぉ、もももぜぇったい気に入るからぁ」
ご機嫌の朝美様は鞄から鏡を取り出し、私の前に差し出した。
ああ、どうしよう!!
私もついにお化粧デビューしちゃったよ!!
雑誌とかに載ってるような、小悪魔ガールになれるの?なっちゃったの!?
男を誘惑しちゃう、魅惑の女に私が!?
いや~ん、モテすぎちゃって困っちゃうみたいな!?
やだ、超緊張する……!!
呼吸するのすら苦しい……!!
ひとりで変な息遣いになりながら、決死の覚悟で私は鏡を覗き込んだ。
そこにいたのは、悪魔だった。

