……耐えろ、耐え抜くんだ!!
これは神様が私に与えた試練だ、きっとそうだ!!
忍耐力を試されているに違いない!!
この究極に空気の読めない女王は、神様がお遣わしになったんだ……!!
と、自分に言い聞かせながらも。
「それでもムカつくもんはムカつくんだよ!!」
「あっ、何すんのよぉ!!」
やけっぱちになって朝美のポテトをひょいひょいつまみ食いしたら、ぎゃあぎゃあ文句を言われた。
そっちの方がめんどくさかった。
「っていうか、いい加減教えてよ。なんで私をここに連れてきたの」
「いいけどぉ、そ・の・ま・え・に☆んふっ☆」
ふ、ふふっ……いい根性してんじゃねえか。
何だろう、この腹の底から湧きあがってくる衝動は。
拳を握っておかないと、取り返しのつかないことになってしまいそうな気がする。
笑顔が引きつってしまう。
不快度指数MAXだよ。ハイジよりイライラしちゃうよ。
もうハイジなんか屁だよ、おならぷ~だよ。
「ももをアサミがぁ、魅惑の小悪魔ちゃんに変身させてあげるからぁ☆」
「……は?」
言うが早いか、朝美は鞄からポーチを取り出し、テーブルの上に置いた。
その中には化粧道具がぎっしり入ってて、私の知らない物ばかりで思わず見入ってしまった。
「な、何する気!?」
「決まってるじゃ~ん!ももにぃ、めちゃめちゃキュートなメイクをし・て・あ・げ・る♪」
ええええ!!
何という余計なお世話!!!
「いいよ、いらない!!別にして欲しくない!!」
「何言ってんのぉ、ももはいっつもノーメイクなんだもん。ちょっとくらい女の子らしくしなさいよぉ」
ほっといてよ!!
する必要なんかある!?何のために!?
っていうかやり方わかんないし、道具だって持ってないし!!
そりゃまあ、ちょっとは興味あるけど……。
「まずはぁ、アイメークからね」
「いででででで」
「あ~んもぉ、動かないでよぉ」
持ち手がハサミみたいになってるヤツで、睫毛を挟まれた。同時にまぶたの肉も挟まれた。
痛すぎて泣いた。
朝美によると、コレは睫毛をカールさせるビューラーという道具らしい。
それから痛い目見るのが嫌で、大人しく朝美様にされるがままになっていた。
テーブルには化粧道具がずらりと並べられていて、ちょっとだけ感心したりして。
化粧って、こんなに色んな道具を使うの?
全部揃えようと思ったら、お金かかりそう……。
私の一ヶ月のお小遣いなんて、あっという間に消えちゃうよ。
でも……キラキラしてて華やかで、見ているだけで心が踊った。

