気まぐれヒーロー2



これからも、その生き様を。

決して折れず、吹き消されることもない、圧倒的な“生”を。

どうか近くで、ジローさんに示してあげてほしい。


ジローさんには、きっとタイガが必要だから。



「しゃーねえよなァ、ソイツに貸した百円返してもらうまではよ」



ダルそうに言い捨てて、タイガはまた、ふいっと前を向いた。

照れてるのかもしれない。



「……五十円だ」



ぽつりと落ちた声。

タイガのものじゃない。


じゃあ──。



「ジローさん!目が覚めたんですね、大丈夫ですか?」



視線を下ろすと、さっきまで意識のなかったジローさんが、重たそうにまぶたを上げていた。

まだ完全に覚めていないのか、目がとろんとしている。

私は彼の手を握ったまま、頬が緩んでしまうのを抑えられなかった。



「……タマ」

「はい」



ちょっぴり掠れ気味な、ジローさんの声。

それでも私を呼んでくれることを、幸せだと思ってしまう。

ほっこりしちゃって、お風呂での出来事も頭の隅に追いやっていた。




「元気な子を、生んでくれ」




フッと、儚げな笑みがこぼれる。
その微笑のまま私を見上げ、彼はさらりと告げた。


……え?


私、本気でわからなくて。

いくら頭を捻ってみても、これまでのジロー迷言集を解析してみても。

一向に答えなんて出てこなくて。


数秒、固まった。


なんだか満足そうなジローさんに、返せたのは苦笑だけ。


心配になったりもした。

もともと一本ネジが抜けてたのが、さらにもう一本いっちゃったんじゃないかって。



「えーっと……うーんと……、はい」



とりあえず「はい」って言っときゃ何とかなるだろうと、適当に返事しておいた。

でも、ジローさんが薄く笑ってくれるから、それだけで胸がいっぱいになって。
私も「ふふっ」って笑い返した。


すっかり二人の世界に浸りきって、周りにぽわぽわお花を咲かせながら微笑み合っていると。



「あのよ、あえて言わせてもらうけどよ」



存在を忘れ去られていたタイガが、心底ウザったそうに一言。




「バカだろ」




その通りだ。


私たちはハタから見れば、バカ以外の何者でもなかった。



こうして──

ドタバタと波乱だらけの金曜日は、幕を閉じた。











【『気まぐれヒーロー』第二部・完】