これからも、その生き様を。
決して折れず、吹き消されることもない、圧倒的な“生”を。
どうか近くで、ジローさんに示してあげてほしい。
ジローさんには、きっとタイガが必要だから。
「しゃーねえよなァ、ソイツに貸した百円返してもらうまではよ」
ダルそうに言い捨てて、タイガはまた、ふいっと前を向いた。
照れてるのかもしれない。
「……五十円だ」
ぽつりと落ちた声。
タイガのものじゃない。
じゃあ──。
「ジローさん!目が覚めたんですね、大丈夫ですか?」
視線を下ろすと、さっきまで意識のなかったジローさんが、重たそうにまぶたを上げていた。
まだ完全に覚めていないのか、目がとろんとしている。
私は彼の手を握ったまま、頬が緩んでしまうのを抑えられなかった。
「……タマ」
「はい」
ちょっぴり掠れ気味な、ジローさんの声。
それでも私を呼んでくれることを、幸せだと思ってしまう。
ほっこりしちゃって、お風呂での出来事も頭の隅に追いやっていた。
「元気な子を、生んでくれ」
フッと、儚げな笑みがこぼれる。
その微笑のまま私を見上げ、彼はさらりと告げた。
……え?
私、本気でわからなくて。
いくら頭を捻ってみても、これまでのジロー迷言集を解析してみても。
一向に答えなんて出てこなくて。
数秒、固まった。
なんだか満足そうなジローさんに、返せたのは苦笑だけ。
心配になったりもした。
もともと一本ネジが抜けてたのが、さらにもう一本いっちゃったんじゃないかって。
「えーっと……うーんと……、はい」
とりあえず「はい」って言っときゃ何とかなるだろうと、適当に返事しておいた。
でも、ジローさんが薄く笑ってくれるから、それだけで胸がいっぱいになって。
私も「ふふっ」って笑い返した。
すっかり二人の世界に浸りきって、周りにぽわぽわお花を咲かせながら微笑み合っていると。
「あのよ、あえて言わせてもらうけどよ」
存在を忘れ去られていたタイガが、心底ウザったそうに一言。
「バカだろ」
その通りだ。
私たちはハタから見れば、バカ以外の何者でもなかった。
こうして──
ドタバタと波乱だらけの金曜日は、幕を閉じた。
【『気まぐれヒーロー』第二部・完】


