「悪ィけどよ、俺はオメーを逃すつもりはねえ」
言い放ちながらギラッと、虎の目が鋭い光を宿す。
声まで尖り、いつもの笑みを引っ込めたタイガの顔つきは、牙を隠しきれない。
「オメーが選んだんだ。そばにいることで、どんな目に遭うか……わかってて、俺らを選んだ」
そうだ。
これは、私が選んだ道。
太郎さんに忠告されても、
もう元には戻れないと、知っていながらも。
「うん、私が決めたこと。わかってる。後悔なんてない。だけど……」
そう、後悔はない。
でも、自信も……ないの。
迷いながらタイガを見返すと、しばらく探るようにこちらを見つめて──
気が抜けたように、表情を緩めた。
深いため息のおまけつきで。
「ああ、オメーってヤツはいきなり妄想爆発すっし、俺を敬わねえし俺の魅力もわかってねえし、すぐ泣くしビビリだしそのくせ強がっちまうし、可愛げねえし実際可愛くもないしで、どーしようもねえヤツだけどよ」
なんかすごい言われようだ。
コケにされすぎて、逆に何も感じないくらいだ。
「マジでしょーもねえ女なら、とっくに切ってる。たとえ響さんの妹でもな。どーでもいいヤツにいつまでも付き合うほど、暇じゃねえんだよ」
そしてまた、いつもの調子でタイガが笑うから。
「ごちゃごちゃ考えんな。俺らはオメーといる。それが答えだ」
不安が嘘みたいに、スッと引いた。
何でかな。
タイガにそう言われると、それでいいんだって思える。
安心をくれる。
芯が強くて、本当は厳しい──そういう人だからこそ。
認めてくれたのが、たまらなく嬉しかった。
「優しいね、タイガは」
「なんだオメー、今ごろ気づいたか。みんな半世紀前には承知の事実だ」
いや、半世紀前てアンタ。
生まれてもねーだろうよ。エロの『エ』の字もねーでしょうよ。
「タイガは……ジローさんのそばにいてくれるよね。ジローさんを、支えてくれるよね……?」
やっぱりタイガが、一番ジローさんに近いんじゃないかと思う。
ジローさんの魂に問い掛けられるのは、タイガなんじゃないかって。


