気まぐれヒーロー2




ただただ、悲しかった。


この“傷”の数だけ、彼が死を願ったということ。

死を恐れず、それどころか、生きることを手放そうとしていた人だから。

だから、何からも逃げなかった。


命を狙われたとしても。



「……ジローは、女も克服しようとしてた。けど無理なんだよ。ソイツ、女に触れねえ。触られんのもダメだ。どうにもなんねえ」



淡々と言葉を続けるタイガの顔は見えない。

見えるのは、彼の背中と、ゆらゆらと立ちのぼる白い煙だけ。


今はただ静かに目を閉じているジローさんを、抱きしめたくなった。

胸を締めつけるこの切なさに、思わず強く抱きしめたくなった。



「ソイツはもう、女を抱けねえ……トラウマのせいでな」



タイガはさらに続ける。



“それが男にとってどれだけの意味を持つか、わかるか”



その声はだんだん低く、色を失っていった。


気づけば私は衝動のままにジローさんの手を掴み、その手を両手で包み込んでいた。ぎゅっと、強く。

今は少しだけ冷たい、その手を。


目の奥が、鼻の奥が、つんと熱くなる。


泣き出しそうになるのを、必死で堪えた。



“俺のそばにいてくれ”



彼が私を抱きしめながら囁いた、その言葉。

その裏に隠されていた寂しさ。孤独。痛み。
そして……死にたいほどの絶望を知ってしまった時。

胸が、引き裂かれそうになった。


何をされたの?

誰が、したの?

誰が、あなたを暗闇に引きずり込んだの……?



「もも、オメーだけだ。ジローがそんなんでも離れていかなかった女は」



ようやくタイガが、こちらへ顔を向ける。


その眼差しは、静かな優しさに満ちていた。



「ずっとバージン守り通してくれてて、良かったよ」



そして、余計なことまで添えてくれた。

守り通したわけじゃなく、単に誰からも相手にされなかっただけだとわかっていながら、わざと。