「よく考えたら、私みんなのこと何も知らない」
彼らと出逢って、まだ一ヶ月弱。
知っているのは、彼らを黒く、野蛮に、獰猛に飾る“噂”だけ。
「私……みんなといて、いいのかな」
バカ騒ぎして、一緒に笑い合ったって。
本当は、私は彼らと肩を並べられるような人間じゃない。
その横に立てる気がしなくて。
一歩、引いてしまう自分がいる。
お兄ちゃんとの繋がり。
それが、彼らが私を傍に置いてくれる理由なんだと。
彼らと引き合わせてくれたのは、きっとお兄ちゃんなんだって、信じてる。
だけど──
その先は?彼らの手を取った後は?
生きていくのは“私”。
私自身が、彼らと生きる。
そこに響兄ちゃんはいない。
“私”だけでも。
全部取っ払った“私”だけでも、彼らは受け入れてくれてただろうか。
『花鳥響の妹』じゃなかったとしても。
「そりゃあ、チチ揉みまでされちゃ他人のフリはできねーよなァ」
「……私、マジメに聞いてるんだけど」
「俺もマジメだよ、ももちゃん」
タイガの背中が、くくっと揺れた。
笑いを漏らしながら、白煙がふわりとほどけていく。
「ジローはな、」
一息ついて、タイガは話し始めた。
私はその声を逃さないよう、耳をすましていた。
とても大事な話だろうから。
「壊れちまってた。オメーに会うまでは」
語られるのは、ジローさんの背負ってきた過去。
胸の奥で、鼓動がひとつ、跳ねる。
眠るジローさんに視線を落とす。
彼の髪にそっと触れてみた。
柔らかい、銀の髪に。
「いつ死んでもおかしくねえ生き方してた。ナイフ向けられたってビビるどころか、ソイツの手掴んで刃を自分の胸に当てんだよ。“心臓はここだ、よく狙え”ってな。ジローにとっちゃ、死は恐怖じゃねえ。“救い”だ。終わらせてほしかったんだろうよ──自分じゃなく、“誰か”の手で」
タイガの声を聞きながらも、私の目はただ、“彼”を追っていた。
傷を刻みながら、それでも静かに寝息を立てている、美しい少年を。


