気まぐれヒーロー2




「よく考えたら、私みんなのこと何も知らない」



彼らと出逢って、まだ一ヶ月弱。

知っているのは、彼らを黒く、野蛮に、獰猛に飾る“噂”だけ。



「私……みんなといて、いいのかな」



バカ騒ぎして、一緒に笑い合ったって。

本当は、私は彼らと肩を並べられるような人間じゃない。

その横に立てる気がしなくて。
一歩、引いてしまう自分がいる。

お兄ちゃんとの繋がり。

それが、彼らが私を傍に置いてくれる理由なんだと。

彼らと引き合わせてくれたのは、きっとお兄ちゃんなんだって、信じてる。


だけど──

その先は?彼らの手を取った後は?


生きていくのは“私”。

私自身が、彼らと生きる。


そこに響兄ちゃんはいない。


“私”だけでも。
全部取っ払った“私”だけでも、彼らは受け入れてくれてただろうか。

『花鳥響の妹』じゃなかったとしても。



「そりゃあ、チチ揉みまでされちゃ他人のフリはできねーよなァ」

「……私、マジメに聞いてるんだけど」

「俺もマジメだよ、ももちゃん」



タイガの背中が、くくっと揺れた。

笑いを漏らしながら、白煙がふわりとほどけていく。



「ジローはな、」



一息ついて、タイガは話し始めた。


私はその声を逃さないよう、耳をすましていた。

とても大事な話だろうから。



「壊れちまってた。オメーに会うまでは」



語られるのは、ジローさんの背負ってきた過去。


胸の奥で、鼓動がひとつ、跳ねる。


眠るジローさんに視線を落とす。

彼の髪にそっと触れてみた。
柔らかい、銀の髪に。



「いつ死んでもおかしくねえ生き方してた。ナイフ向けられたってビビるどころか、ソイツの手掴んで刃を自分の胸に当てんだよ。“心臓はここだ、よく狙え”ってな。ジローにとっちゃ、死は恐怖じゃねえ。“救い”だ。終わらせてほしかったんだろうよ──自分じゃなく、“誰か”の手で」



タイガの声を聞きながらも、私の目はただ、“彼”を追っていた。

傷を刻みながら、それでも静かに寝息を立てている、美しい少年を。