気まぐれヒーロー2




なんかバカらしくなって、私はタイガから離れ、ソファーの向こうにあるベッドへ歩み寄った。

まだ目覚める気配のない、ジローさん。
全身に冷えピタを貼られている。

鼻に詰められたティッシュをそっと取ってあげれば、鼻血はもう止まっていた。

大丈夫かな。


タイガよりはマシだけれど、顔が傷だらけでも。

それでも、彼は綺麗だと思う。

長い睫毛が、下まぶたに柔らかい影を落としている。


私はベッドの横でしゃがんで膝を床につけたまま、しばらくその寝顔を見つめた。


こうしてると、何だか落ち着くから。


そのとき──
部屋が、急に静かになった。

さっきまで流れ続けていた淫らな雑音が、ぱたりと途絶え、代わりに「シュッ」とライターの火がつく音だけが妙に響く。

タイガがテレビを消したんだ。

背中に目をやれば、彼の肩越しに薄い白煙がゆらゆらと上がっている。
タバコを吸っているんだと、すぐわかった。


こうして、彼は空気を冷たくしてしまう。
灰色に淀んで沈む。

さっきの軽口はわざとだったんじゃないかと思わされるくらいに。

そんな予兆もなく、問いかけることさえも許さず。



「オメー、何か聞きてえコトがあんじゃねえのか」



背を向けたままの声なのに、私の血まで冷えていく。


タイガがこちらを見ずとも、虎の目に貫かれなくても、その背中には十分な圧があった。


聞きたいこと。

タイガに、聞きたいこと。


漠然とした問いに、視線の先の金色を、この目に留めた。

いつも光を集める色。
太陽の下でギラギラと輝きを放つその様は、まるで彼そのもののよう。


金と銀。

太陽と月。


タイガとジローさんは、背中合わせで立っているように思える。

真逆だからこそ、成立している関係。

足りないものを、互いに補っているから。


聞きたいことなんて、ありすぎる。

ありすぎて、どれから言えばいいのかもわからない。

そもそも、聞いていいのかすらわからない。